社会とか、文化とか

蔵書は散逸してこそ - 古本はたいせつにしよう

桑原武夫蔵書破棄のニュースを聞いたときには、なんとも残念な気持ちになった。けれど同時に、「ああ、そうだよなあ」とも思った。 mainichi.jp 敬意を込めて「桑原武夫」と敬称抜きで書くのだけれど、恥ずかしながらたぶん私は桑原武夫の著述を読んでいない…

米はどこへ行った - 若い頃の疑問にここらで決着をつけておこう

学生の頃だったかあるいはその少し後だったかは忘れたけど、とにかく若い頃、「米はどこへ行った」という大きな疑問が私の中に生まれたた。現代の話ではない。江戸時代のことだ。 私が子どもの頃、教科書には「江戸時代には士農工商の身分制度があり、農民が…

なぜ坊主は妻帯しないのか - ある試論

人類がアフリカの片隅から世界中に居住範囲を広げていった速度は、大型哺乳類としては相当に速い。その後も、急速に生活様式や食性を変化させ、環境に適応していった。そうやってニッチごとに環境に適応していったのに、種としての同一性は保たれている。 こ…

マストドンは絶滅しても

しょせんは亜流? マストドン、最近何かと話題になっているツイッター・ライクなソーシャルコミュニケーションツールのことだけれど、これは流行る。いや、流行らない。どっちなんだ? まず、現状のままのマストドンが流行るとは思えない。理由はいくらでも…

道徳教育推進教師に資格はない? - 無資格教員が教科を指導する矛盾

指導要領改訂で道徳科という科目ができるとかいう話を聞くのだけれど、家庭教師としては文部省のサイトに「道徳科の評価で,特定の考え方を押しつけたり,入試で使用したりはしません。」と書いてある以上、特に関心はない。特定の思想の押し付けはないと言…

漢文を教える意味はあるのか? - そりゃあるんだろうけど…

別にウラをとったわけでもない単なる与太話なのだが、中学の教科書に漢文が載っている理由は、詩吟協会(なんてものがあるのかどうか知らないが)の陰謀ではないかとずっと思っている。詩吟というのは漢詩を独特の節回しをつけて読むもので、幕末ぐらいから…

キャッシュを貯めこんでどうするの? - 暗記派への疑問

人間の記憶はアテにならない 家庭教師という仕事をしていると、ときどき生徒が気の毒になる。学校の教師の中にはずいぶんと大量の知識の暗記を生徒に強いるタイプのひとがいるからだ。そういう教師は、テストに暗記していなければ解けないだろうというタイプ…

「教材」はケチをつける練習台

中学生の頃の私は、本当に嫌な生徒だっただろうと思う。教師から見てね。というのは、教師の誘導には絶対に乗らなかったから。単純にひねくれ者というだけなのだけれど、それが凄まじかった。 たとえば社会のテストで、「イギリス」と書かねばならない解答欄…

学校はなんのために? - 不登校をめぐる見落とされがちな事情

学校は教育のため? 私は学校行かなくてもいいじゃない(いろんな意味で) と思っている。というのも、自分自身が高校時代にはほぼ完全に授業から精神的にエスケープしていたし(早い話が体育以外はほぼ完全に居眠りしてた)、自分の息子(中3)も天下に隠れ…

「教育勅語を教材に」は、もちろんあり得る

私の祖母はもうずいぶん前にこの世を去っているのだが、私をずいぶんとかわいがってくれた。その祖母が小学生だったか中学生だったかの私に向かって話してくれた言葉を思い出す。 「じゅんちゃん、なんでも覚えといたらええんやで。覚えて悪いことは泥棒だけ…

プロは信頼しても、やっぱり安心はできないという話

家庭教師の仕事をやっていると、けっこうな確率で学習障害(LD)に出くわすことになる。家庭教師というと「難関校受験対策のために金持ちが雇うもの」というイメージがあるかもしれないが、実際にはそういうケースはそれほど多くなく(もちろんある程度の比…

軍歌を歌う小学校は実在したか

軍歌ってなんだろう? 先日来、「軍歌をうたわせる幼稚園」というのが話題になっている。「そりゃないだろう」とか「時代錯誤だ」みたいな感じで多くの顰蹙をかっているわけだが、そういう話を見ていて、なんか「軍歌」のイメージがちがうんじゃないかという…

奇妙な三輪車 - Like-t3に乗ってみた

私は、長いこと自動車の免許をもっていなかった。もともと都市部に住んでいたからその必要を感じなかったからであり、自動車学校に払う数十万円とそこに通う時間をもっとほかに使いたかったからでもある。地方都市に移住を決めたときにはちょっと不便を感じ…

保育園で国歌・国旗は強制できない(技術的にも、法令的にも)

今日もまた、我が家に7人の保育園児がやってきた。前回記事にも書いたが、年長児たちが卒園を前に、「よそのお家」に遊びにくる企画だ。こういう変な企画にノッてきてくれる保育園があって、本当にありがたいなあと思う。そして、保育園って、そういう融通無…

「毎年やってるから」を理由にするのはやめよう

今年も、保育園の年長組の子どもたちが我が家にやってくる。息子が保育園の年長さんだったときに始まったこの行事、今年で9回目。よくここまで続いたもんだと思う。 中身は至って単純。保育園の子どもを5〜8人ぐらい(年によってちがう)のチームに分けて自…

「敬語」は「敬語」じゃない - 文法教育に存在するバグ

敬語は不要ではないか。誰もがそう思う一瞬があるだろう。けれど、なくならない。それには理由がある。 anond.hatelabo.jp 敬語がなければ、日本語が日本語にならない。なぜかといえば、敬語は日本語文法の中にしっかりと食い込んでいるからだ。だから、敬語…

いかにして子どもをゲームから遠ざけるか

自分自身を振り返って、親が子どもに何かを禁じるのは、そのこと自体が問題だと思う。親の言うことなんて、たいていは聞かなくてけっこう。かつて子どもだった自分自身の経験からはそう言い切っていいと思う。 とはいいながら、今度は親になってみると、子ど…

笑うのはたいへんだし、泣くのはもっとたいへんだ - 現代落語に寄せて

なんで「マックで女子高生が」が私にウケなかったのか? 中学2年生の息子、落語が趣味で、小学生の頃からあちこちでシロウトの一席を披露してきている。福祉施設の慰問とか、ローカルなイベントとかで。ただ、声変わりで思うようなパフォーマンスができない…

禁書がある国にロクなことはない

「バナナはおやつに入りますか?」 この文明化された日本という国に、禁書が存在する。驚いた、と言いたいところだが、驚くことでもないかもしれない。 togetter.com 学校というところは、実に奇妙なことをやってくれる。以前から、そういう話はあった。 det…

AIによる投資は未来をつくるのか? - あるいは、資本主義の言い訳を聞きたい

AIで株って? 株式投資の現場に実際に人工知能が導入されているらしいという報道をしばらく前に聞いて、いろいろ考えていた。これは機関投資家がやっていることだと思っていたのだが、一般投資家にもその利用が広がるようだ。 www.nikkei.com そしてさらに、…

ボブ・ディランのノーベル賞に言葉がない。

ボブ・ディランがノーベル文学賞! なんとも驚きだ。そして、嬉しい。ノーベル賞、さすが、やることがダイナマイト級。 アメリカの文壇では、喜ぶ人がいると同時に、「なんで作家じゃないんだ!」「フィクションは去年も対象じゃなかった。それはないよ」み…

いつの間にか消えていたePubs.jp - 無料のWebサービスにありがち、とはいえ

このブログを書いていて、「そういえばむかし書いたものをePub形式でアップしてたよなあ」と思い返して探してみたら、サイトが消えていた。そのサイトというのは、ePub投稿サイト。電子書籍が普及する黎明期に立ち上げてくれたサイトで、私はけっこういろい…

署名で謝罪を要求するのはちがうと思う

例の問題で例の人に謝罪を求めるという動きがあるそうだ。 www.change.org いや、これはちがうだろう。 まず、本人は既に謝罪したつもりになっている。その上に謝罪を求めても、せいぜい「○○さんに言われたとおりに謝罪しました」的なものしか得られないはず…

自然環境保全の思想は、地球外に適用されないのか

環境問題に対する考え方は、人によって極度にちがう。自然環境の保全という一点だけとっても、人間の干渉を極度に排除する純潔主義から、人為と自然の相互作用に着目する相対的な視点、さらには人類にとって有用かどうかで保護されるべき自然の価値を評価し…

マッチの灯は消えるのか? ─ この秋は、神戸らんぷミュージアムへ行こう

日本国内のマッチ産業が風前の灯という記事があった。 www.kobe-np.co.jp 国内製造4社のうちの大手1社が撤退ということ。たまたまウチの引き出しを見たら、2種類のマッチがあった。いずれも兼松日産農林株式会社製。この会社が淡路島にある工場を閉鎖するら…