社会とか、文化とか

決定プロセスと実行プロセスを同じ組織に委任してはならない

成長性の高い企業の特徴のひとつは、意思決定の権限が末端に委譲されていることだ。本当かどうかは知らないが、そういう指摘をときどき目にする。スピード感が何より重要な時代にあって、上層部の許可がなければ動けない企業は遅れをとる。現場の動きをいち…

なぜ「昔話」のオリジナル版をあまり目にしないのか

こんな増田記事を見てブコメを書こうと思ったけど、長くなるのでこちらで。 b.hatena.ne.jp [B!] 昔話はなぜ文語じゃないんだろう 「昔話」と一口に言っても、中身はいろいろある。柳田国男を先駆として各地で採取されてきた「民話」が量からいっても質から…

無敵の人になる方法 - はみ出し者の組織における役割

家庭教師を派遣する小さな会社に雇われて子どもに教え始めてからちょうど8年になる。初めての生徒をもったのが2013年の2月だった。いまでも印象に残っている。あの頃は、私もまるで素人で、生徒にずいぶん迷惑もかけた。私だけじゃない。会社もいまよりもず…

生きにくさは社会的な文脈で変わる - 「忘れ物」は特異な概念かも

前回、忘れ物のことを書いたら、かなり多くのひとが読んでくれたようだ。特に私同様に忘れ物で苦労したひとからのコメントが多かったのは心強かった。それと同時に、私から見たら筋違いと思われるようなコメントも、それなりにいろいろ考えさせてくれるヒン…

なぜ「忘れ物を叱る」のが無意味なのか

忘れ物をしても叱らない教育をしている学校があるとかいうTogetter記事を見て、「そりゃそうだ」と思ったのだが、そこについてるブコメ群のかなりの部分を占める意見が否定的なのに驚いた。いや、ほんとに驚いた。 b.hatena.ne.jp もちろん、「叱ってもいい…

「手伝い」の概念は変化してきたのか? -  生業と家事のあいだ

「家のことを子どもが手伝うみたいな言い方をするようになったのって、いつ頃ですかね」。古い友だちにコーヒーをご馳走になりながら話していたときのことだ。田舎で百姓をやりながら大工としてそこそこに名前も売れてきたその友人とは、知り合ってもう四半…

たねをとるのは自然権 - 種苗法に寄せて

種苗法改正を巡って、いろいろな人の声を聞くようになった。私は以前、自家採種に関する本の編集に携わったこともあって、この方面には決して無関心ではない。けれど、法制度に関してはその本の著者グループの間でさえ温度差があり、私のようなシロウトがあ…

変わってこその文化、受け継いでこその文化

地味に凄いWebsiteがあった。 chuseimonjo.net 日本の中世文書 数はまだ多くないのだが、古文書の画像が公開されている。それだけならまあ珍しくもない。凄いのは、それに音読音声をつけてくれていること。古文書の素養などまったくない私でも、音声を聞きな…

なぜ若者に説教してしまうのか - 老害は避けられない運命

17歳の若い子を友人の家に連れて行った。この春まで家庭教師として教えていた生徒である。推薦枠を利用しての大学進学という方向性がほぼ確定したので、これ以上の受験準備も必要なかろうということで指導を終了した生徒だ。私の中では片付いた生徒だった。…

社会の原理と個人の原理が異なることについて - 歴史と個人と

在日韓国・朝鮮人のことについて少し書くつもりなのだが、私は決してその方面に明るくはない。むしろ、私より上の世代の常識を基準にしていえば無知な部類に入るのだと思う。それでもその私の理解を書こうというのは、そういった不正確で誤りの多い理解でさ…

保育園の仕事と経営者の仕事と

What business are you in? 私は「ガープの世界」以来のジョン・アーヴィングのファンなのだが、彼の作品群のなかで特に印象に残っているシーンがある。季節労働者の作業場でもあり宿所でもあるサイダーハウスでリンゴ酒の醸造中に、労働者のひとりであるジ…

なぜビジョンを語らないのか - それができれば苦労はないのだが

太陽光発電のことを書いたひとつ前のエントリがやたらとアクセスが集中して、ちょっと困惑している。確かに太陽光発電に関連するある領域は私の専門と言ってもいいのかもしれない。けれど、底の浅い専門だし、その他にもっと自分にとって重要なことはたくさ…

太陽光発電は終わったのか?

太陽光発電に関する政策を巡っては、当初から現在に至るまで、誤解が絶えない。そして、太陽光発電は、誤解をもとに持ち上げられたり批判されたりしてきている。太陽光発電そのものは持ち上げられるべきものでも批判されるべきものでもない。それに関する政…

伝統はつくっても迷信はつくらんでくれという話

私は案外と迷信深い。神社にお賽銭を投げ込んで家内安全を願ったりするし、プラセボプラセボと唱えながら鍼治療を受けたりもする。感覚的に腑に落ちるものは、特に根拠がなくても否定はしない。水に百回ありがとうと唱えて味が変わるとは思わないが、ありが…

こみいった話をこみいったままに書くのは難しい

著者ってのは救いようのないくらい文章が下手くそだ。若いころ編集業界の末端にいた私は、傲慢にもそんなふうに思っていた。なんでこんなわかりにくい文章を書くんだ、ここは整理したらもっと論旨がすっきりするじゃないか、ここはほとんど繰り返しじゃない…

錯覚資産を息子に与えた話 - ブルデューを想いながら

「勘違いさせる力」を「錯覚資産」と位置づけるブログ記事(というよりも書籍の一部らしい)が話題になっているようだ。たしかに、錯覚を起こさせることでそれを経済的な力(具体的には例えばお金)に替えることができるのならそれは資産として扱うこともで…

医師は男性で看護師は女性 - 文化としての医療

先月、父親が入院した。どこがわるいわけでもない、というよりも、(検査の数値的には)わるいところだらけで、そういった数値からだけではいったいなにが原因なのか特定は非常にしにくい。ともかくも、ふらふらになってぶったおれそうだったので、とりあえ…

60年前のスパゲティレシピについて

なんか、しょうもない増田につけたコメントにやたらと星がついてるみたいなので、補足しておく。いや、補足するほどの情報もないのだけれど、ちょっと誤解を招いてはいけないなあとも思ったので。 30年前のスパゲッティ 一方、60年前に出された料理本には、…

「文化の格差」という捉え方をやめよう - ちがっているのがあたりまえ

地方都市は住みやすい 若い頃、田舎まわりをしていた。それについて書き始めたら長編小説並みの自分語りになるのでやらないが(いつか書き残しておきたいとは思うけど)、沖縄を除いてほとんどの都道府県に足を踏み入れた。風来坊を泊めてくれる奇特な農家の…

合理的に見える話は案外と危険

世の中、ちょっと考えればウソだとわかることにころっと騙される人が多い。いや、私もけっこう騙される方で、子どもの頃にはあの有名な「消防署の方から来ました」に騙されて、親の留守中に消火器を買わされてしまった経験もあるぐらいだ。「一万円」と言わ…

エクセル問題に決着をつけるとしたら - まずは仕様策定が必要なんじゃない?

神エクセル? エクセル方眼紙? 少なくとも何ヶ月かに1回は、ネット上で「紙Excel問題」が話題になる。いい加減食傷気味ではあるのだけれど、うんざりしながらも私だってそのたんびに「Excelはどうにかしてくれ」と言ってしまう。たとえばこんな話題なんかに…

なんで大砲の弾が神社で見つかる? - 複合する歴史と心理

神社に見つかる旧日本軍の砲弾 少し前、大分を中心に砲弾が神社で見つかって自衛隊が出動したとか、ニュースが流れていた。数ヶ月前から断続的に話題に上るらしい。「あそこの神社にあったんだって」「そういえばウチにもあったな」みたいな感じで、連鎖的に…

なぜ有機農産物を選ぶべきなのか、あるいは選ぶべきではないのか?

野菜に罪はない 私はいわゆる「有機農業」をやっている人、そういうのを志した人、その周辺の人々を数多く知っている。なかにはずいぶんと親しい友人もいる。恩人といっていい人だっている。そういうコミュニティに属していたことがあると、こんな記事を読ん…

教師の仕事は「教える」ことではない - 情報提供者としての自覚

ひょんなことから始めた家庭教師の仕事も、けっこう長くなった。やってて面白いなあと思うのは、これが全力投球を要求されるからだ。子どもだましの古臭い知識を適当に教えとけばいいとか、あるいは生徒が問題を解く監督だけしときゃいいとか、いや、たしか…

「大丈夫です」は、大丈夫なの?

ミルクを入れるべきか否か? 紅茶が2つ運ばれてくる。ミルクを入れたポットがひとつ。私はポットをとり、「ミルクは?」と聞く。向かいに座った若い人は、「大丈夫です」と答える。私はちょっと考えてから、自分のカップにだけミルクを入れる。 たぶん、若い…

蔵書は散逸してこそ - 古本はたいせつにしよう

桑原武夫蔵書破棄のニュースを聞いたときには、なんとも残念な気持ちになった。けれど同時に、「ああ、そうだよなあ」とも思った。 mainichi.jp 敬意を込めて「桑原武夫」と敬称抜きで書くのだけれど、恥ずかしながらたぶん私は桑原武夫の著述を読んでいない…

米はどこへ行った - 若い頃の疑問にここらで決着をつけておこう

学生の頃だったかあるいはその少し後だったかは忘れたけど、とにかく若い頃、「米はどこへ行った」という大きな疑問が私の中に生まれたた。現代の話ではない。江戸時代のことだ。 私が子どもの頃、教科書には「江戸時代には士農工商の身分制度があり、農民が…

なぜ坊主は妻帯しないのか - ある試論

人類がアフリカの片隅から世界中に居住範囲を広げていった速度は、大型哺乳類としては相当に速い。その後も、急速に生活様式や食性を変化させ、環境に適応していった。そうやってニッチごとに環境に適応していったのに、種としての同一性は保たれている。 こ…

マストドンは絶滅しても

しょせんは亜流? マストドン、最近何かと話題になっているツイッター・ライクなソーシャルコミュニケーションツールのことだけれど、これは流行る。いや、流行らない。どっちなんだ? まず、現状のままのマストドンが流行るとは思えない。理由はいくらでも…

道徳教育推進教師に資格はない? - 無資格教員が教科を指導する矛盾

指導要領改訂で道徳科という科目ができるとかいう話を聞くのだけれど、家庭教師としては文部省のサイトに「道徳科の評価で,特定の考え方を押しつけたり,入試で使用したりはしません。」と書いてある以上、特に関心はない。特定の思想の押し付けはないと言…