教育とか、英語とか

「宿題論」を書く前に - ある生存者バイアス

子どものころから宿題ができない。いまだに宿題となると、とたんに進まなくなる。実は、数年前から書こうとして書けていない文がある。自分にとっての宿題なのだけれど、これがなかなか仕上がらない。忘れたわけではない。デスクトップの目につくところにず…

自尊心がなければやってらんない、という話 - The Greatest Love of All

家庭教師やってると、失敗ばかりでときにはイヤになる。生徒とのセッションは基本的には楽しい時間だ。けれど、それが結果としてどうなのかというと、たとえば「やっぱりここ、まちがえるかよ」とか、「なんでテストの点数が伸びないんだよ」とか、客観的に…

中学生用の英語教材自作の話 - 一例報告

英語教育の理想と現実 家庭教師として中学生に英語を教えるのは、けっこう悩ましい。というのも、理想と現実の間の距離があまりにも離れすぎているからだ。 究極の理想としては、言葉はその言葉が使われている場所で生まれ育った人々が覚えるように覚えてい…

中学受験は、やっぱりおかしい - 基礎教育が目指すものと評価基準の乖離

「成長」というとらえどころのないもの 教育が目指すものは、なにはさておき、人間の成長である。人間の成長を支える介入を教育とよぶ、と定義しても差し支えないほどだ。原理的に、これに異を唱える人は多くないだろう。多数の人が教育を人間の権利とし、そ…

教師が「叱る」ことは原理的に可能なのだろうか?

家庭教師をやっていて、生徒を叱ったことがない。これはなにも私の性格がどうとかいうことじゃなく、原理的に家庭教師は生徒を叱る立場にないからだ。もっとも、生徒の方で勝手に「叱られた」と受け取る場合があるので、これはなんとかしなければいけないと…

「体操服の下に下着を着ない」は、変態教師の妄言とは、ちょっとちがう

ブラック校則との関係で「体操服の下に肌着を着てはいけない」というルールが少し前からときどき取り上げられる。私は着衣や髪型などに関してとやかくいうのは人間としてどうなのと思うほうだから、こういうルールが学校にあるのはおかしいと思っている。そ…

地頭の良さと受験勉強と

学習塾的な教育が「本質的に」役に立ってるのかという増田(Anonymous diary)記事があった。 anond.hatelabo.jp SAPIXみたいなのって本質的に役に立ってんの? 老子によればおよそこの世の中無用のものはないのであって、そりゃ、この世に存在するものであ…

個別の優秀さは全体がクソであることを救わない - 神戸にもいい教師はいる

神戸市北区の小学校教師が「忘れ物」に対して理不尽な対応をして処分を受けたことが報道された。以前のエントリで「忘れ物を叱っても意味はない」みたいなことを書いたばかりということもあって、暗澹たる気持ちになった。 www.asahi.com 消しゴム忘れた児童…

翻訳の思い出

自分名義の翻訳書が何冊かあるので「翻訳者」を名乗ってもバチは当たらないと思うのだけれど、経済的な寄与でいったら私の生涯の収入に翻訳からの印税や翻訳料が占める割合はそれほど多くない。いろいろな半端仕事を継ぎ接ぎしながら生きてきた、そのパッチ…

中学受験は、そろそろ根本的に変わったほうがいい

役に立ってない中学受験勉強 中学受験はおよそ害悪だ。私がそう思う理由は単純だ。それが子どもたちの役に立っていないからだ。中学受験制度そのものは、それは何らかの役に立っているのかもしれない。少なくともそれを実施する私立中学校にとっては、メリッ…

「生活作文」の気楽な書き方 - 昨夜のアドバイスをもとに

コロナのおかげでどうなるのかと興味深く(失礼!)見ていたのだが、どうやら私の観測範囲では、学校の夏休みの宿題はいずれも例年に比べて少なくなっているようだ。そりゃそうだろうと思う。夏休みは短いし、その短い夏休みに補習を実施するところも少なく…

暗算のヒント - 人間の頭の構造は人それぞれだけど

何年か前、「ズルい算数」という本を書こうと思ったことがある。暗算を中心に、主に四則演算の計算方法について、実用的な方法をまとめておこうと思ったのだ。出版のアテがあったわけではない。書けたらオンデマンド印刷でもやって生徒に配ろうと思っていた…

BlackLivesMatterは「黒人の命は大事」なのか?

合衆国を吹き荒れる#BlackLivesMatterの嵐は、けっして他人事ではない。現代社会がコロンブス以降のグローバル化の果に成立していることを思えば、そのなかで植民地支配の歴史と人種差別の歴史はすべての人々の生活に分かちがたく絡まり合っているといえる。…

なぜいま9月新学期を語るべきではないのか - 意見は変わるのが当たり前

思いもかけず「9月入学」の議論が行われるようになって、マズいなと思っている。本質からズレまくっているからだ。それに関してはもう1週間も前に書いた。 mazmot.hatenablog.com 「9月」は手段であって目的ではない。そして、手段としても既に遅きに失して…

学校はどうすればいいのだろう - 現在進行中の不具合

春休みを含めれば既に2ヶ月、そしてこの先の1ヶ月の合計3ヶ月にわたる学校休業は、既に大きな被害をもたらしている。直接の原因は天災である。新型コロナウィルスの流行がなければこういった事態にはなっていないわけで、そういう意味では誰の責任でもない。…

「授業」はもう時代遅れなのか - 言葉はていねいに使わなければいけないなあ

授業ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説 教師が諸分野の知識,技能を生徒に習得させるために行う活動。講義や一斉教授など教師中心の授業が伝統的であったが,今日では新教育の影響で,生徒の自主性や経験が重んじられ,多様な授業方式がある。また…

どのような形で「感染拡大下の教育」が可能になるのか - 極論としての試案

学校のスタートを9月にするという政策が動きはじめているようだ。1ヶ月前からそれを主張してきた私は、複雑な思いをかかえている。それに関しては前回のエントリに簡略に書いた。 mazmot.hatenablog.com 正直、この話題には少し辟易してきていて、そろそろ別…

「9月始業」は目的ではない - 手段と目的を取り違えることの危険

突然のように学校の「9月入学・始業」が取り沙汰されるようになった。私はほぼ1ヶ月前から「9月始業」を唱えてきたので、本来これを喜ぶべきなのだろう。もちろん、「今頃になって遅すぎる」という不満はある。けれど、議論の初動が遅れるのはやむを得ないと…

「9月新学期」について再々考

4月1日のエントリと前回のエントリで、「COVID-19による学校閉鎖問題のひとつの解決策としての9月新学期への制度変更」について書いた。この問題に関しては緊急に議論を深める必要があると思う。その議論はもちろん、こんな片隅の雑記ブログなどではなく、国…

9月新学期再考 - 後手後手の対策はすべてを消耗させる

先週末あたりから急にこのブログへの検索からの流入が増えたなと思っていたら、その頃、有名教育評論家が「9月新学期」を言い出したらしい。そして、それを受けて文部科学大臣も「様々なところで声が上がっていることは承知している」みたいなことを言ったと…

「安心」は安心じゃない - 定訳の厄介さ

専門的な文書、論文であるとか専門書であるとかを翻訳する場合には、まずはその分野の基礎知識がなければならない。とはいえ、依頼が来てからきっちり勉強していたのでは間に合わないから、だいたいは参考文献リストとかから見当をつけて、周辺の文献を大急…

なぜいま9月新学期を検討すべきなのか

4月は学校新年度、というのはもう日本では明治以来常識であって、それを前提にした文化も定着している。入学式には桜の花吹雪だし(最近は温暖化と流行歌のせいで桜はすっかり卒業式に前倒しになったが)、教科書も春から始まる。たとえば小学校の理科では春…

翻訳者は裏切り者

はるか昔、英語の翻訳を学んでいたとき、「翻訳者は裏切り者」( translator is a traitor)という言葉を教えてもらった。元はイタリア語だということで、半分は音が似た単語を並べた言葉遊び(traduttore, traditore)とのことでもあるけれど、現実にそんな…

なぜ27万円のAtomマシンが問題なのか

渋谷区が小中学生向けに導入を決めたタブレットのコストが1人あたり27万円に上ることが話題になっている。これが高いのか安いのか、それは考えかたによるだろう。だが、問題はそこではない。 www.excite.co.jp note.com ざっくり言ってしまえば、区が要求し…

なぜ学校はワープロを受け入れない? - 「現実」に過適応していると未来が失われる

私の観測範囲だけのことではあるのだけれど、現代の小学校、中学校、一部の高校においては、パソコンを使用した提出物を受け入れない。もちろん細かいことをいえば例外はあって、たとえば小学校の夏休みの自由課題なんかでパソコンを使った研究みたいなのは…

大学受験の思い出 - 生存者バイアスから人は逃れられない

大学入試改革が荒れている。改革の目玉の二本柱を失って、「結局センター試験とどう違うの?」という結末が見えてきたのだけれど、まあ変わるところは変わるんだろう。そして、この一連の報道を見てきて、入試に対する自分の感覚は世間一般とずいぶんズレて…

いま、学習産業に携わる意味 - 時代は変わる

家庭教師の端くれとして再び学習産業にかかわるようになってもうちょっとで丸7年になる。「再び」というのは若い頃に出版業界の片隅の「学参」とよばれる分野で仕事をするようになり、20年ばかりその周辺で仕事をしてきた過去があるからだ。そういった「子ど…

最も公平な入試制度 - たとえそれが実現しても、平等は遠い

「入試制度改革」とそのドタバタ劇(特に「民間試験導入」をめぐるもの)を、私は冷ややかな目で見ている。高校生も教える家庭教師として無関係ではないし、実際その動向は商売にも大きく影響するのだけれど、どっちかというと「アホなことは勝手にやってく…

学校はその権力性をもう少し意識したほうがいいという話 - 権力分立が民主主義の基本なのに

睡眠時間は成長期の子どもにもっとも重要だというのに 九州(あるいは福岡県)の高校には、「0限目」あるいは「朝課外」というものがあるらしい。たまにネット上の記事で目にすることもあったし、このブログのコメントでもそういう話が出ていたことがある。 …

なんでノートをとるのかわからない - 美風なんだろうけど

白状すると私はノートを1冊使い切ったことがない。いわゆる大学ノート、学習用のノートのことだ。その小型版の手帳でさえ使い切ったことがない。途中からそれははっきりとわかったので、大学の山岳部にいたときには必要な枚数だけ白紙を小さく切ってホチキス…