EV乗り比べの記 - i-MiEVとMINICAB MiEVを乗ってみて

いま、車を乗り換えたところだ。先週までちょうど2年のあいだ乗っていたのが三菱のi-MiEVで、これは2009年に製造されたEVの初期型の中古車だった。それに代わって乗り始めたのが同じ三菱のEVで、やはり型式としては同じ時期に製造が開始された軽ワゴン車の新車だ。同じEVでもだいぶちがう。実は新車の納車から2週間ほど、同時に使用して乗り比べをしていた。そういうことをした人はあまりいないと思うので、一例報告。ただし、なにかデータを取っていたわけではないので、あくまで感想文にすぎない。

たぶんごちゃごちゃと長くなるので、要点だけ先に書いておこう。

  • i-MiEVは乗用車で、MINICAB MiEVは貨物車。根本的に発想がちがう。
  • 具体的には、経済巡航速度がi-MiEVは60km/hぐらいの感じだけれど、MINICAB MiEVの方は40km/hぐらいの体感。もちろん内装その他はi-MiVEが快適でMINICAB MiEVは質実剛健
  • 共通する特徴として、電気自動車は乗りやすい。加速がいいし、レスポンスもはやい。航続距離はほぼ予測計算値通りに出る。そして、新車ではそれがカタログ値と同じか、やや上回る。
  • ただし、上り坂や急加速、高速運転では、航続距離は急激に減少する。そういう区間が連続して入ると、航続距離はカタログ値を大きく下回る。
  • 充電コードのプラグ形状が旧式と新式で異なっていた。余分な出費になった。
  • i-MiEVの古びた電池に比べ、新MINICAB MiEVの電池はやっぱり新しいだけのことはある。新しい電池を基準にすると、古いのは容量が50%ぐらいに落ち込んでいた。そして、急速充電にうまく対応できず、充電速度は新しい電池の半分ぐらいしか出なかった。よって、ディーラーの急速充電器での充電では、単位時間あたり4倍ほどの航続距離が出る。結果、150円で80km走るというとんでもなく安い電気代を実感できた。

忙しい人はここで帰っていい。以下、駄文。工学部にいた人間ならちょっとぐらいデータ取っとけよとも思うのだが、最終的に落ちこぼれてるのは、やっぱりそういうのが向いてなかったということなのかもしれない。なので、きちんとした根拠がないから、感覚のウソが交じるだろう。したがって、そういう観点で興味がある人には読む価値はない、というのが残念ながらあたってるかな。

なぜEVか?

長らくEVには懐疑的だった。電気で走ると言ったって、電気はどこかで発電しなければならない。発電には石油とか、ウランとか、そういった有限な資源が消費される。結局は石油を発電所で燃やすか車のエンジンルームで燃やすかのちがいでしかない。宗教上の理由*1でできるだけ原子力発電の電気は使いたくないから(そして消費者に選択権はないから)、電気はなるべく使わないに越したことはない。だったら、電気自動車よりもガソリン車というのが、長らく私の個人的な考えだった。車の運転そのものもべつに好きでやってることではないから、乗らずにすむなら自動車の使用も控えれば、まあ、そこまで地球温暖化とか、気に病むこともなかろうと。

その考えが大きく変わったのは、5、6年前だったか、屋根の上に載せた太陽光発電の固定価格買取期間がもうじき終了を迎えるということに気がついた頃だった。太陽光発電のことを書き始めると長くなるのでそこはあえて触れないのだけれど、私の家の場合、2009年に設置して、そこから10年間、余剰電力は割高で電力会社に買ってもらえることになっていた。この制度の趣旨は、本来は割のあわない太陽光発電の投資分をこの10年間である程度回収しなさいよということであって、実際、10年間の売電収入と自家消費による電気代の節約分を合わせると、(計算方法によって異なるのだけれど)まあそれに近い数字にはなる。そうなったら特にパネル設置者を優遇するいわれは何もないので、余剰電力の買取価格は極端に下がる。いうなればタダ同然の捨て値で売るしかなくなる。もちろんそれでもゼロではないし、自家消費分の電気代は下がっているのだから、経済的にも文句を言う筋合いは何もない。ちなみに、それで儲かるのかといえばメンテナンス費用でその経済効果は相殺されるから、べつに(特別に儲けるための工夫をすれば別だけれど)太陽光発電は儲かるものではない。要は、ライフスタイルの選択の問題だ。

ともかくも、そういう選択をした結果として、10年後からは電気をタダ同然で売り渡す立場になる。そういう叩き売りをするぐらいなら、自分で有効に使うほうがいい。そこで気がつく。この電気は、石油を燃やしているのでも核分裂によって発生する熱を使っているのでもない。もちろんパネルの製造とか設置とか運用とかで化石燃料の使用が発生するからどこまでも「クリーン」だと主張する気もないけれど、少なくともいま、ここで晴天の日に生み出されている瞬間の電気は、太陽からのものだ。メガソーラーの停止が問題になるぐらいに太陽光の電気が余りつつある現状、それを有効利用できるなら、それに越したことはない。

蓄電池というアイデアがある。うまく使えれば、グリッドからの実質的な独立、つまり、電力会社からの買電をゼロにさえできそうだ(私の家の電力消費はそのぐらいに小さい)。ただ、蓄電池のシステムはけっこう高価で、おまけに私の家のようなごくささやかな量しか電気を消費しないライフスタイルを想定していないから、牛刀をもって鶏を割く状態になってしまう。いろいろ調べても、どうもうまくフィットしない。そうやって悩むうちに、「そうだ、電気自動車なら」と思いついた。

その頃は、まだ家庭教師の仕事もオンラインではなく、訪問だった。訪問は基本的に自動車で行う。そのガソリン代が、月に1万円にもなる。その1万円が節約できるなら、EVに投資しても十分にもとがとれる。だいたいが、ガソリンを燃やして二酸化炭素を発生させながらやる仕事にもいいかげん嫌気がさしていた。屋根の上で発電される電気にすれば、そのあたりの気持ち悪さも多少はマシになるかもしれない。

そこで検討をはじめたのだが、当時、2017年から18年頃に、EVの選択肢はあまりなかった。私のニーズは家庭教師でせいぜいが片道20kmぐらいまでの範囲内の生徒宅を訪問するだけなので、できるだけ小さな車がいい。日本だと軽自動車ということになる。ところが軽自動車のEVは、当時は三菱のMiEVしかなかった。乗用車のi-MiEVか商用車のMINICAB MiEVかだ。どちらも、自分としては「なにかちがう」という気がしていた。そこでさらに調べたら、原付き規格の4輪車が、トヨタをはじめ国産でも中国製でも存在することがわかった。政府が「超小型モビリティ」という概念で小型のEVを認可していく方向であることもわかった。それに先んじて、中国製やインド製の電動トライシクル(トゥクトゥク)を販売している業者もあることがわかった。

ただ、あんまりにもマニアックなものは、メンテナンスの問題がある。そこでいつも車の整備を依頼しているガレージの社長に相談した。すると、中華製の原付き規格の4輪で知り合いのディーラーが輸入しているのがあるという。おもしろいと思ってそれを試乗させてもらいもした。これでいくかなあという気もした。

ところがそのあたりのタイミングで、老父の体調が落ち込んでいった。そうなると、父親を乗せられる車というのが条件になってくる。原付き規格の4輪は1人乗りだ。トライシクルは人を乗せられるけれど、車室を密閉できないので冬季や雨天に難がある。やっぱりふつうの車じゃないとなあとなって日産のノートとかも検討したが、プラグインで充電できるわけじゃないので候補から落とした(技術的にはエンジンを発電専用で使うやり方は非常に優れていると思う。私のニーズに合わなかっただけだ)。そうなると、やっぱり三菱のMiEVしかない。

そこで2018年には、実際にMiEV(MINICABの方)を契約する直前までいった。その段階ではまだi-MiEVも生産していたので、どちらでも選べたのだが、試乗したときの見晴らしが商用ワゴンのほうがよかったので、そちらに決めた。その時期に乗っていた軽乗用車の視界の悪さには辟易していたのだ。そしてハンコや住民票なんかの書類一式を持って契約にいった段階で、「充電器の設置工事」を求められた。

私は屋根の上の太陽光による発電で充電したかったから、そのまま100Vコンセントから充電するつもりでいた。ちなみに、この時代のMiEVのシリーズは、いずれもオプションで100V充電のケーブルがあって、それで家庭用の100Vコンセントから充電できるようになっていた。それを使うつもりだったのだけれど、いきなり「専用の200V充電設備を設置してください」と言われて戸惑った。「いや、100Vで運用するつもりなんですよ」と答えても、「それでも200Vの端子が必要です。それがなければ販売の契約はできません」と、ディーラーの担当者は譲らない。その時点で私には屋根の上の太陽光からの余剰電力が充電用の200V端子から出力できるかどうかの知識がなかった。基本的には売電は200Vで出している。だから理屈の上では可能だと見当はついた。けれど、実務的にどうなっているのか、ちょっと調べてみないとわからないなと感じた。回路の引っ張り方によってはうまくいかない気もした。なので、その時点では契約を保留にして、「調べて返事しますよ」ということになった。

ちょうどその頃、父親の体調が急速に悪化した。いや、ちょっと新車どころじゃない、という感じになって、「調べなきゃ」とは思いながらも手が回らず、気がついたら父親の入院で病院に通い詰めとなって、EV購入の話は立ち消えになってしまった。思い返してみたらこのタイミングで三菱のMiEVのどちらかを買っておくのがあらゆる意味でベストの選択だったのだと思う。けれど、多忙すぎてそれどころでなかった。結局のところ、EV購入の第一章は夢と終わった。

そこから3年近くがたち、2021年の秋、息子が免許をとることになった。私の乗っていた軽乗用車は、そのまま息子に譲る話になって、私は自分用に1台の車を必要とすることになった。その時点で家庭教師の仕事は全面的にオンラインに移行していたから、そういう意味では私はもう車を必要としない身になっていた。実際、家庭教師を辞めたら車の運転もやめようぐらいに思って、必要であればカーシェアで間に合わそうと、タイムズの会員にもなっていた。ところがその時期はまだコロナのまっただ中だった。父親の死後、一人残された母親を定期的に訪れる必要があるが、できるだけ電車は使いたくない。そこでEVの構想が再浮上した。

ただ、その段階で、三菱はMiEVシリーズの生産を終了していた。手に入れようと思っても、もうつくっていないのだ。そこでふと気がついた。何も新車にこだわることはない。確かに補助金とかは新車じゃなければつかないけれど、べつに補助金が欲しくてEVに乗るわけではない。電池は劣化しているだろうけれど、逆にいえばそれだけに値段が安くなっているのではなかろうか。調べてみると、確かに十万円台からMiEVの中古車はあるようだ。それに中古車だったら、「充電設備が必要です」みたいな文句を言われることもない。電池が劣化しすぎていたら、交換すればいいのだ。交換にかかる費用はWeb検索の情報だと、だいたい110万円から上になるようだが、それでも新車が手に入らないのなら、考慮に価する。中古車の状態にもよるけれど、仮に30万円で中古車を買って120万円で電池を交換しても新車を買うよりもだいぶ安い。この方向かなと思った。

ただ、コロナの流行から新車の製造ラインに支障が出た影響で中古車市場全般の相場があがった状態が続いていたらしく、MiEVシリーズの中古車でMINICABはいずれも高額だった。i-MiEVの方は比較的安価だったが、いつも世話になっているガレージの社長と一緒に検討をしていくと、どうにか使えそうな状態のものは30万ぐらいになる。諸手続きや再整備費用を加えると50万を超える値段になる。しかし、長いことの夢でもあるEVだ。ここはひとつ奮発しようと、そこそこに状態がいい、けれど、製造は最も古い2009年製のi-MiEVが私の専用車となることになった。

i-MiEVの2年間

最初にi-MiEVに乗ったときの感想は、「やたらとレスポンスがいいな」だった。その感覚はいまも変わらない。モーターは、踏み込めば踏み込んだだけ、素直に反応する。加速・減速に関して、ガソリンエンジン車のように無意識のタイミングみたいなものをとる必要がない。だからガソリンエンジンの車から乗り換えた当初はすこし戸惑ったが、数日で慣れた。そしてそうなったら、操作性の良さに感心することになる。

そういった感覚とはべつに、気になったのが航続距離だ。カタログ値は120kmだけれど、10年以上経過している車、そこまで伸びるはずがない。満充電した状態で(ちなみに100Vケーブルが付属していたので20AまでOKの通常のアース付き100Vコンセントからふつうに充電できた)、「走行可能距離」の指示が80km前後を指すのがわかった。これがそのとおりに走るなら、十分に実用になる。

ちなみに、家庭教師として生徒宅を訪問する必要がなくなって以後、さらに息子が免許をとって彼を送迎してやる必要がなくなって以後の私の主な自動車の用途は、実家訪問の往復になった。これが最短距離の高速道路を使って片道約50kmになる。実家のすぐそばにはイオンのショッピングモールができていて、そこには各種充電設備が整っている。なので、片道がもてばそれで大丈夫だ。80km走るのなら、すこしの余力を残して到着できることになる。

実際やってみると、往路はまったく問題がなかった。というのは、私の住居は標高300mぐらいの山の上の住宅地にあるので、下りは燃費がいい。ときには「バッテリー残量計」の充電量を示す目安の目盛りで半分近くの余力を残して実家に到着できる。問題は帰路だ。同じ50kmといえ、上り坂になる。上り坂になると、急速に航続距離は下がる。

実際、使い始めのころ、帰路の坂道の途中で「電欠」状態になったことがある。一本道だから後続車の邪魔にならないようになんとか路肩に寄せたが、最初はよく理解できなかった。というのも、計器の上ではまだ電池残量があったからだ。

この「バッテリー残量計」、目盛りが16ある。仮に80kmの航続距離が信用できるのであれば、1目盛りあたり5kmの計算になる。走行してみると、平坦で走り続けられる道であれば(たとえば田園地帯の裏道なんか)、実際にこれは十分に出る。6km近くまで伸びることもある。坂道途中で「電欠」になったとき、実はこの計器の目盛り、残りが3から2になったばかりだった。ということは、まだ10kmくらいは走れるはずだ。けれど、車は止まってしまった。

これが電池劣化の実態だ。電気は残っているのだけれど、坂道を登るに足るだけの電力を一気に出すだけの電気量がない。参ったなあと思ったが、車をUターンさせて下りにかかったらふつうに走る。坂を下りきって平地に出ても、やっぱりふつうに走る。ふつうに走って高速充電器が設置されている車販ディーラーまで行って、充電した。このときは「やっぱり電池交換しなきゃな」と、120万円の出費を覚悟した。

この「1目盛りあたりの走行距離」、上記のように条件がよければ最大で6kmぐらいまで伸びることもあるが、ふつうの町走りだと4.5kmぐらいになることが多かった。冬季は電池の持ちが落ちて、4kmぐらいになる。そして、高速道路を使うと1割ぐらい落ちる。上り坂だと半分ぐらいになる。さらに、上記のように、上り坂だと2目盛りを切ったら坂道の途中で止まる可能性がぐっと高まる。ということは、実用的には航続距離50kmぐらいで考えておくのが穏当ということになる。

厄介なのは、私の住居がどちら側から回っても坂道の上に位置するということだ。帰宅するためには、最後の数kmはどうあっても標高差150〜250mの坂を登らなければならない。ということで、最後の2目盛りで登れなくなるということは、登りはじめの段階で4目盛りぐらいはなければ突っ込めない計算になる。坂の入り口に都合よく充電スポットがあるわけではないので、「危ないかも」と思ったときには予め少し手前の充電スポットで充電しておくことになる。結果、夏場のバッテリが快調なときには実家からの帰路の50kmはかつかつ可能だが、実家で満充電できなかったときや途中寄り道をしたとき、あるいはバッテリ性能が低下する冬季なんかには、帰路の途中で充電スポットに立ち寄るのが常となった。

そう、冬季にはバッテリ性能が急速に低下する。おもしろいのは実際の気温変化よりも少しタイムラグがあることで、木枯らしが吹き始める11月ぐらいはまだそれほどの低下は感じられないが、12月になると急速に落ち込む。そして暖かくなってきた3月あたりはまだ回復せず、5月半ばぐらいになってようやく安定する。どんなふうに性能が低下するかといえば、まず航続距離が下がる。1割から2割、落ち込む。次に、高速充電時の充電速度が低下する。カタログでは30分の充電で80%ぐらい回復するようになっているのだが、厳冬期の最も調子のわるいときだと20%ぐらいしか回復しない。ちなみに三菱の車は三菱のディーラーの充電スポットが安くて30分で150円なのだが、これで20%ぐらいしか戻らないと、燃費はガソリン車とほぼ変わらないことになる。経年劣化のバッテリは、このぐらいにひどい(夏場だと30%ぐらいは回復する)。

興味深いのは、この劣化しきったバッテリ、2年間の使用期間中にはそれ以上には目立った劣化がみられなかったことだ。寒くなると航続距離が下がってきて「ああ、やっぱりバッテリがダメだわ」と思う。ところが暑くなる頃には復活して「やっぱり気温のせいだったんだな」と思う。その繰り返しで、結局、買ったときと手放したときでほぼ航続距離に変化はなかった。とことんまで劣化しきったら、そこである程度安定するものらしい。このあたりは、急に死ぬスマホのバッテリとは大きなちがいだ。やっぱり自動車用ともなると、そのぐらいの品質は確保するものなのだろう。

バッテリに不安があって特に冬場なんかにはしょっちゅう充電スポットに立ち寄らねばならないのはそれなりのストレスだった。けれど、それを除けば、乗るほどにi-MiEVはいい車だなと感じるようになった。モーター駆動は、単純に乗りやすい。「踏めば踏んだだけ加速する」というのがこれほどラクなものだとは思わなかった。

ただ、そういう操作性の良さを武器にガンガン飛ばすようになったかというと、これがまったくの逆だった。急加速・急減速、そして高速運転は、とにかく電気を消耗する。もちろん劣化したバッテリで常に充電残量を気にしなければならないということがあったからというのが大きいのだけれど、そうでなくてもやっぱりバッテリ残量は気にかかる。その結果、ガソリンエンジン車時代とは打って変わって安全運転になった。これはもちろん、家庭教師としての生徒宅訪問がなくなったことも大きく影響している。仕事でスケジュールをきっちりと詰めて車に乗っていると、どうしても運転は荒っぽくなる。飛ばせるところは飛ばし、抜け道は最大限に利用し、信号なんかの障害はそれぞれの特徴を掴んで一瞬でも早く抜ける小技を身につけて、周囲の迷惑にならない程度、警察の厄介にならない程度に走り抜けることになる。そういうストレスがなくなったタイミングで、EV乗りになり、省エネ運転を心がけるようになった。結果、制限速度走行で余裕をもってエンジンブレーキをかけるという模範ドライバーに転身した。阪神高速を制限速度を守って走るなんて、「そんな非常識な」と思っていたのが、実際にやってみるとそういう仲間が結構たくさんいることにも気がついた。「年をとったらEVやで」と、免許をとったばかりで車の運転が楽しくてしかたない年代の息子に話したりもした。いつでも加速して抜けられる心の余裕でもってタラタラと安全運転するのは、案外に気持ちがいい。

ただし、バッテリの心配があるので、せっかくついているエアコンを活用することはほとんどなかった。実家で母親を買いものや病院に連れて行くときには、冷房も暖房もつける。エアコンの効きはガソリンエンジン車と特に変わらない。つけるか、つけないかだけれど、自分一人のときにはバッテリの減りを気にしてほとんどつけず、厳寒期には湯たんぽを抱えて乗るようにしていた。

i-MiEVからMINICAB MiEVへ

ということで2年間、ヘタレのi-MiEVに乗り続けたのだけれど、3度めの冬を前に、「次の冬にはあのバッテリはゴメンだなあ」と思うようになってきた。冬はバッテリがもたないから実家から帰る途中にほぼかならず充電スポットに寄る。寒いなか、30分の時間を待つのは(たいていその間は買いものに行ってるのだけれど)さすがにめんどうだと思うようになったのだ。

解決策としては、バッテリの交換か新車の購入になる。中古車は、バッテリの状態がわからないし、同じような劣化具合のバッテリにあたったら何をやってるのかわからないので、選択肢から落とした。2年前に比べると、軽の電気駆動車は各社、少しずつではあるけれど出るようになってきている。MiEVのシリーズは終わってしまったけれど、三菱は日産と共同でEKクロスのEV(日産版はサクラ)を売り出すようになった。トヨタはc-podを出した(これは入手不可だった)。これを書いている段階でホンダが来春のN-VAN e:の発売を発表したとかいう報道がある。中華製のEVも徐々に入ってきつつある。選択肢は少しは増えた。そして、そうこうするうちに、企業向けに生産を再開していた三菱のMINICAB MiEVの一般販売が再開された。新車の購入は十分な選択肢になる。

バッテリの交換は、ディーラーに聞いたら「モノによるので実際に見積もりしないとわかりません」とのことだけれど、だいたいは120万円ぐらいが相場のようだ。そこだけみれば、バッテリの交換のほうが圧倒的に有利だ。ただ、三菱の場合、新車にはバッテリ保証というのがついてくる。一定の年数、走行距離までの間にバッテリが劣化したら安価にバッテリ交換をしてくれる。これに該当するかどうかは走ってみないとわからないのだが、もしもそこに該当したら、新車の購入は「バッテリ2回分の購入」にほぼ該当することになる。新車はざっと260万円だ。それに補助金で返ってくる分もあるから、実は新車のほうが安かったりすることにもなり得る(バッテリの劣化状況によって話は変わるわけだけれど)。

それ以外のいろいろな検討条件もあったのだけれど、そこは個人的な事情とか好みとかいろいろ入ってくるから、あまり長く書いてもしかたない。たとえば、三菱のEKクロスは顔が気に食わないとか日産車は嫌いだとか、そんなことを聞いても「はあ?」でしかなかろう。

最終的にMINICAB MiEV購入に落ち着いたのは、他の選択肢をひとつひとつ落としていった結果でしかない。以前に購入するつもりで試乗もしていたから、だいたいのことはわかる。「あれならいいか」という感じで、決めた。100Vの充電ケーブルがオプションで存在するというのも魅力だったが、これは「販売中止」とのことで入手できないことがわかった。残念だったけれど、i-MiEVに乗るようになって実家の方に200V用のコンセントも設置したので、200V運用でもかまわないかなとも思った。ちなみに、5年前に調べがつかなかった太陽光発電の電流を200Vで利用することに関しては、やっぱり可能であり、何の難しいこともなくコンセントの工事ができることがわかっていた。なので、そこの障害もなくなっていた。もともとの趣旨である「太陽光発電の余剰電力を有効活用したい」というのは、一般的な200V用の電気自動車でも満たすことができる。

ただ、もうその前提を抜きにしても、「次もEVだなあ」という気持ちにはなっていた。というのも、上記のように走行性能がいいことに加え、メンテナンスがほぼ不要で2年間の運用ができたからだ。

ガソリンエンジン車の場合、老朽化してくるとやたらとメンテンナンスに費用がかかるようになる。たとえば以前に乗っていた軽自動車では、定期的なオイル交換はもちろんのこと、タイミングベルト交換、エンジン搭載部分のダンパー交換、排気ガスセンサーの交換、ラジエーターの修理などが10年を超えたあたりから頻発するようになった。そのたびに3万とか4万が出ていく。そして、これらはすべてガソリンエンジンに係るメンテ&トラブルだから、電気モーターでは基本的に発生しない。電動車であるi-MiEVでもアクセサリー周りのバッテリはガソリン車と同じ鉛蓄電池なのだけれど、プラグの発火に使わないためか、劣化がなくて、これも2年間で1回も交換しなかった。たぶん前照灯やブレーキ灯、ブレーキパッドなんかは同じように劣化するし、実際、タイヤは1回交換した。とはいえ、メンテンナンス費用は圧倒的に小さくなる。費用だけでなく、「ぼちぼちオイル替えなきゃ」とか気にすることがないのはストレスの軽減になる。やっぱり、「年をとったらEV」なのだ。

MINICAB MiEVに乗ってみて

新車のMINICAB MiEVが入ってきて、最初に乗ったときの感覚は、「やっぱり見晴らしがいいわ」だった。商用車で市街地の走行が多いことを想定してあるからか、ミラーも死角が少なく、取り回しがいい。そして、「え? こんなショボいの?」と思ったのは各種の装備だ。後席の窓はパワーウインドウではないし、前席のパワーウィンドウの操作も一時代前の感覚だ。キーレスエントリーはオプションでつけてもらっていたものの、起動のためにキーを挿入する必要はあって、それさえ不要だったi-MiEVとはだいぶちがう。サンバイザーの駐車券入れとか、後部座席用の車内灯とか、ダッシュボードの収納部のティッシュペーパーホルダーだとか、ドリンクホルダーとか、ハンドルのグリップの持ちやすさだとか、「最近の車だから」と思っていた装備品類が実は乗用車のグレードによって付属しているものだと知った。ナビは要らないからと言ったのはたしかに私だけれど、オーディオの入る部分にカバーもなくむき出しになっていたのにはちょっとおどろいた(一応、購入前に聞いていたのだけれど、やっぱり聞くと見るとは大違いで)。内装に金属部がむき出しとかシートが布ではなくて塩ビ製だとか、そういったのは商用車だからそうなんだというのは知っていた。後部座席がオマケみたいなものだというのも、i-MiEV時代に後部座席に人を乗せたことが2回ぐらいしかないから別に構わないとは思っていた。それにしても、実に質実剛健。言葉をかえれば、i-MiEVはけっこうな高級仕様だったんだなとわかる。そりゃそうかもしれない。なにせ初期発売時には400万からした車だ。その値段なりの内装でないと、買う方は納得しなかっただろう*2

計器周りはi-MiEVとまったく同じで、これに関しては違和感も何もなく、助かった。そして、EV独特の「踏めば踏んだだけ加速する」というのも同じ。なので、最初の印象は、「これはi-MiEVにMINICABの車体を乗っけた車なんだな」だった。販売店で受け取ってその足で50kmほどドライブしたが、運転のしやすさに見晴らしの良さが加わって、実に気持ちが良かった。

そして、肝心のバッテリだ。カタログ値では航続が133kmなので、「バッテリー残量計」の16等分の目盛りを信じるのであれば(あくまでこれは目安でけっして電力量の残量に正確に比例しているわけではなさそうだけれど)、1目盛りあたり8.3kmとなる。それを上回るだけの距離は出たので、やっぱり嬉しかった。上記のように劣化バッテリのi-MiEVが1目盛りあたり4.5kmぐらいだったから、およそ倍の数字になる。これで安心して実家往復ができる。

ただ、そこから2週間ばかり、i-MiEVととっかえひっかえ乗るうちに、「あ、やっぱり別の車なんだ」というのがだんだんにわかってきた。それは、「パワーメーター」の挙動だ。これは、ガソリンエンジン車のタコメーターのようなもので、どのくらいの電力を消費しているのかを表示している。これが絶対値なのか相対値なのかとか、あんまりよくわかっていないのだけれど、ともかくも、これが大きく振れれば振れるほど、電池の減りが大きいのは実感としてわかる。最初の方は緑のゾーンになっているのだけれど、およそこの緑のゾーンで走っていれば、航続距離は伸びる。高速道路や坂道なんかで踏み込んでパワーメーターの表示が緑のゾーンを超えれば、そのぶんだけ航続距離に影響する。その挙動が、i-MiEVとMINICAB MiEVでは明らかにちがう。

実際のところ、i-MiEVでタラタラと安全運転をしている限り、このパワーメータの針が緑のゾーンを超えることはほぼなかった。高速道路で時速80kmぐらい出すと巡航でもそのゾーンを超えるのだけれど、時速70kmぐらいまで落とすと緑のゾーン内で推移する。上り坂で時速40kmも出すと緑のゾーンを超えるが、坂の傾斜が緩かったり、スピードを落とせる局面だと、なんとかゾーン内で処理できる。発進時には瞬間だけゾーンを超えるけれど、穏やかな加速を心がけたらゾーン内でなんとかなる。だいたいはそんな感じだった。ところがMINICAB MiEVでは、ごく簡単に指針がこのゾーンを超える。発進時やごくわずかな加速でこのゾーンを超える。ゆるい坂でもほぼ間違いなく超える。時速50kmも出すと、超える。明らかにi-MiEVとはちがう。

やはり、乗用と貨物用で設計思想がちがうのだ。貨物用は少々の荷物があってもスムーズに動けるよう、馬力が出るギア比になっている。だから回転数が上がる。配達業務なんかだったら速度を出す必要もないから、経済速度は低いほうが好ましい。だから、(あくまで運転者の感覚の話だけれど)i-MiEVが時速60kmぐらいで燃費が最も良くなるのに対して、MINICAB MiEVは時速40kmぐらいで燃費が良くなる。高速道路なんか走ると、明らかに航続距離が落ちる。「バッテリー残量計」の目盛りで、1目盛りあたり7kmぐらいまで落ちたりもする。都心部を走るときには、たとえ渋滞中でも、燃費は落ちない。かえって1目盛りあたり9kmぐらいまで伸びたりする*3

ということは、やっぱりこれは「MINICABのエンジンをi-MiEVのモーターに載せ替えた車」なのだろうかという気もしはじめた。基本はどこまでも軽ワゴン車であり、ただ、エンジンのかわりに電動モーターで走る。しかし、さらにしばらく乗っているうち、そのどちらでもないような気がしてきた。i-MiEVi-MiEVであり、MINICAB MiEVはMINICAB MiEVだ。たしかに駆動電池やモーターは同じかもしれないけれど、別々の車だと思ったほうがいい。ま、あたりまえといえばあたりまえの話。

電池が新しくなったことで、嬉しいのは航続距離だけではなかった。急速充電が、文字通りの急速充電になった。劣化バッテリの急速充電は名ばかりで、30分かけてようやく航続距離が20km伸びる、みたいな感じになることが多かった。これが一定しないのは季節的なこともあるが、電池残量がどの程度かによって入る量がちがうからでもあった。たとえば55%ぐらいの残量で30分充電すると75%ぐらいまで回復するが、45%の残量だと70%ぐらいまで、30%の残量だったら60%ぐらいまで回復する、みたいにスタート地点が低ければ低いほどたくさん入る。いずれにせよ、時間の割にたいして回復しない。上述のように自宅で充電する場合の電気代はほぼ無料だからそれはいいとして、外で充電するときにはガソリンエンジン車に比べてあまり大きな差が出ない燃費ということになっていた。これが新車のMINICAB MiEVの場合、20%ぐらいのところからスタートして30分の急速充電で80%ぐらいまで入る。60%は133kmの航続距離に対して80kmに相当するから、老朽i-MiEVの4倍ということになる。つまり燃費が4分の1ということになって、これは相当に安い。ちなみに充電の料金は時間割でチャージされるのだが、たとえば高速道路のパーキングは30分で360円、日産のディーラーに三菱車を持ち込むと30分で450円、三菱車なら三菱のディーラーで150円と、けっこう場所によって単価がちがう。150円ならガソリン1Lの現在の価格より安いのだから、それで80km走るなら御の字だろう。

ただ、ひとつ想定外だったのは、充電ケーブルのプラグの規格が旧i-MiEVと新MINICAB MiEVとで変更されていたことだった。これは気がつかないトラップだった。自宅の方のコンセントは新設するからいいとして、せっかく実家の方に設置した200Vコンセントを付け替えなければならない。「どうせこの先もEVしか乗らんのだから」と、長期投資と思ってつけたのに、なにをやってんだかわからない。変換アダプタかなんかないもんかと思って電気屋に聞いたら叱られた。200Vでそういうことをやるバカがいるから火災が起こるんだ、みたいな感じだった。

EVの軽自動車は実用的か?

新旧EVの乗り比べに関する記事は以上だ。もともとi-MiEVを買ったあと、ある程度のデータとって「EVは使えるのか」というテーマで記事を書こうと思っていた。けれど、そこまでマメな性格でもないのと、なかなか「これはこう」という結論が出ない中で、ずっと持ち越しになっていた。そして、新車のEVを買うことで、ようやくそこにも触れることができるようになったような気がする。ただし、その間にEV軽自動車はだいぶ普及したから、私みたいなクルマに詳しくもない者が、それもメジャーどころのサクラみたいなのに乗りもせずに書くのもどうかという感じにもなる。まあ、いつまでも書かないと自分自身の中で決着がつかないから、とりあえずここにオマケのような格好で書いておこうと思う。

あたりまえな話だけれど、これは「用途による」。あるいは「ライフスタイルによる」。1日に数百km走行するのを繰り返すようなユーザーには、EVは向いていない。たとえばホンダの来春出るモデルは航続距離200kmということだが、サクラやEKは180kmだ。1日の移動距離がそれを超えるユーザーであれば、EV軽自動車は選択肢から外したほうが無難だ。ちなみに、私が家庭教師で東奔西走生徒宅を訪問していたとき、1日の走行距離が100kmを超えることもあったが多くは50kmまでで、200km近くなるのは月に1度あるかないかだった。この程度の業務での使用には耐えるだろう。

燃費は圧倒的にいいとして、その分、購入価格が高い。オイル交換など維持費が安いことも加味すれば、年間1万kmぐらいの走行でおそらく8万円ぐらいは出費が節約できる。それが何年続けられるかということで「どっちがトクか」は決まるだろう。

この電気代、ユーザーによって大きく異なる。私のように既に償却済みの太陽光発電設備があって、なおかつそちらを優先に充電できるのであれば、電気代は実質無料になる。実際、100%を昼間の太陽光からの電力で使い回せたわけではないのだけれど、i-MiEVの2年間、電気代は特に上昇しなかった。むしろ大幅に安くなったのだけれど、これは息子が自立して家を出た影響だから、いったいどのくらいの負荷が買電にかかったのかはわからない。ま、多く見積もってもせいぜい月間数百円がところだろう。この買電契約、私は特にオトク契約をしていない。宗教上の理由で深夜電力その他の電力会社が儲かる契約を結ばないからだ。だから、ひとによって、自宅充電にかかってくる電気代はずいぶんと異なることになる。ちなみに、たまに豪華なPHV車がディーラーの急速充電器を占有していて「はよのけや、コラ」とか思うことがあるのだけれど、あれはたぶん、ディーラーの電気代が安いからにちがいない。いや、自宅で充電して、そこは緊急用に空けといてくれよと思う。ともかくも、電気代が安ければ上記の年間節約費用は10万にもなるだろうし、高ければ7万円ぐらいに下がるかもしれない。

自宅充電は、実はEV軽自動車を運用するときの大きなメリットだ。なにせ、ガソリンスタンドに行く必要がない。私は主に昼間に充電するのだけれど、夜、寝ている間に満充電に回復しておいて翌日の1日の走行に備えるなんてことは普通に可能になる。ガソリンスタンドの値段表示を気にしながら、「次にカラになったらあそこで補充しよう」なんて作戦を練る必要がなくなるのは、人によってはそれ自体が大きなメリットにちがいない。ただ、これにはデメリットもあって、「ガソリン入れたついでに空気圧チェックしとこか」みたいな運用ができなくなる。さすがに無料で空気だけもらいにガソリンスタンドに寄る勇気はないので、たまにディーラーに急速充電に立ち寄ったときに、遠慮がちに整備士に頼むことが多かった。

充電に関しては、経済的なこと以上に、運用の適・不適がだいじだ。たとえばi-MiEV運用の最初の頃は実家に充電コンセントを用意していなかったのだけれど、これは実家のすぐそばにイオンがあって、実家に帰るということはそのままイコール、イオンに母親を散歩代わりの買い物に連れていくということでもあったからだ。イオンを歩いている間に、充電ができる。母親が健康を回復してきて散歩時間が短くなってきたので、コンセントを設置した。だから、充電はライフスタイルでもあるわけだ。また、実家から帰るときにはたいてい自宅用の食料品の買い出しが必要になるから、充電の30分で近くのスーパーに寄るのは何の不自由もなかった。深夜に帰るときはたいていオンライン家庭教師の仕事上がりなので、モバイル用のPCで報告書を書くとかの雑用もあったから、充電時間を長いとかムダだとか感じたことはない。ただ、それでもそれなりに鬱陶しいのは確かだった。運用がどこまでぴったりハマるかどうかということだろう。

充電スポットに関しては、そりゃもっとあったほうが嬉しいけれど、特に不足は感じなかった。ただ、何度も愚痴るようだけれど、本来充電の必要もないPHVがデンと充電器を占拠しているときにはほんとに腹が立った。こっちはギリギリで動かしてるというのに、あんたの電気代の節約のために時間をムダにするのかと、まあ本来は筋違いな怒りを感じたわけだ。これが同じEV軽自動車だったら、充電の途中でも「あ、ウチはもうだいじょうぶですから」みたいに譲ってくれることも多かった。やっぱり弱者同士には連帯感みたいなものが生まれる。まあ、これからEVが増えてきたら、こういう風景も変わっていくんだろう。いまは塞がってることはめったにないし、あっても少し待てば順番がまわってくる。

そして、結局は走行性というか、運転のしやすさだろう。EV軽自動車は、明らかにガソリンエンジン車よりも運転がラクだ。エンジン音がないぶんだけ狭く混雑した市街地なんかでは歩行者に気づかれにくくて少し気を使う局面はあるけれど、歩行者ぐらいの低速で徐行しながら抜ける分には大きな危険性もない。要は、交通規則に準拠した安全運転を心がけるなら、EV軽自動車は乗りやすい車だといえる。

ときどき、「EVなんかで渋滞に巻き込まれたら死ぬじゃない」みたいなことが書いてあるのを見るが、実は渋滞時にこそEVは実力を発揮する。ガソリンエンジン車だと渋滞走行は著しく燃費を下げるが、EVではあまり下がらない。渋滞のせいで電池を大幅に消耗した経験は一度もない。電気のモーターは、低速時でもあまり効率が下がらないようなのだ。また、発進時・減速時のエネルギーのムダも、回生ブレーキのおかげか多くない。i-MiEVの2年間、渋滞で燃費が下がる心配だけはしなかった。ただし、それは私がケチってエアコンを使わなかったからではある。エアコンは時間に比例して電気を食うので、長時間渋滞でエアコンをつけっぱなしにしたら、確かに電池は減ってピンチになるだろう。なので、このあたりも個人のライフスタイル依存性が高い。

最終的な私の感覚は、「年をとったらEV」だ。急がず慌てず、長距離を走るでもないけれど、日常に移動手段がほしい。そういうニーズにEV軽自動車は十分にフィットするのではなかろうか。

*1:「反原発真理教」といってもらってもかまわないが、自分的には30年以上前から「分散型エネルギー信者」であると思っている

*2:書き忘れていたが、iMiEVのウィンドウのガラスの紫外線カット率は異常なほどよかった。MINICAB MiEVに乗って「日差しが暑い」と感じて初めて知った

*3:実際のところ、本当にカタログ値の133kmまで伸びるのかどうかということだが、たまたまこの記事を書いた2日後、ギリギリまで航続距離を試してしまう事態が発生した。その結果、128kmの走行で、残り走行可能予測距離が6kmと、やはりカタログ値は出ている。ちなみにこの日の走行は、高速道路は使わず、山を下って大阪の実家まで行き、戻ってきた。なので、坂道のアップダウンを含んでの走行だから、距離が伸びる条件ではない。あと、このときには最後の標高差約200mの登りがあったわけだが、バッテリ残量が20%を切った状態で速度が落ちることもなく登りきってくれた。これはi-MiEVのヘタレなバッテリでは不可能だったことだ