公文書管理に関して独立調査委員会が必要なんじゃない? - 実態を知りたい(知る権利はあると思う)

桜を見る会」の問題は、いろんな要素を含んでいる。私はこれまで最も重要なことはあからさまな選挙違反行為だと思っていた。禁じられている饗応を、こともあろうに税金を使って堂々と行っていたことである。その重大さはどこまでいってもいささかも揺るがないのだけれど、どうも話が進むにつれて、もっと重大なことがあることがわかってきたようだ。それは、政府機関の内部統制問題だ。

桜を見る会」の名簿をめぐっては、廃棄されたことが問題になってきた。いや、それも問題だけど、それはどこの段階でだれがウソをついているかという程度の、いわば個人的な犯罪レベルの話だった。もちろんそれはそれでけしからんことなのだけれど、出せと言われて慌てて廃棄したのか、廃棄してないのに廃棄したことにしたのか、なんだかわからないけれど、とにかくだれかがなにかルール違反をしていることだけは確かだ。だが、それは個人プレーの範疇だろう。

ところがここにきて、過去5年間の「桜を見る会」の名簿が管理簿に記載されていない、つまり、作成されたかどうかさえ確認することができない状態であると報道された。もちろん名簿なしで招待状の発送その他の事務作業が実行できるわけはないので作成されているのはまちがいない。ということは、公文書管理が、法令で定める通りに行われてこなかったということだ。これは、法令にもとづいてしか仕事ができない公的機関の本質を思えば、ありえないことだ。「え?」と、耳を疑うような話である。本来やるべき仕事をやっていないとしたら、いったいあんたらは何してたの?と疑われるレベルの話である。

 

政府機関に限らず、組織がきちんと機能しているかどうかは、監査を行わねば明らかにはならない。そして、政府機関に関しては、会計検査院という独立機関があって、、公金が適切に使用されたかどうかをチェックしている。ただし、会計検査院は、お金のことしかチェックしない。それで十分だと考えられるのは、この資本主義の世の中、たとえ政府機関であっても、何かを実行しようとしたらカネがなければどうしようもないからだ。だから、予算の執行をチェックすればそれで足りる。ただし、それは政府役人は法令を遵守するという前提があっての話だ。法令を遵守している限り、政府機関は予算がなければ勝手なことはできない。そして、役人は嫌になるぐらい規則にうるさいものだ。少なくとも私の知っている役人(かなり下級レベルばっかりだが)は、実に細かいことにうるさかった。鬱陶しいなと思いながらも、だからこそ、公的機関に対する信頼は担保されるのだと、そう思わせてくれるものだった。

ところが、今回、あからさまに組織として法令を守っていないことが明らかになった。こうなったら、会計検査ぐらいでは実態は何もわからない。そして、法令を守らない組織に、その実態を報告させても真相は絶対にわからない。そういう場合には、民間の場合だと第三者機関に調査を依頼することになる。政府機関でも、アメリカ合衆国なら独立調査委員会が設けられる。日本の法令には独立調査委員会の設立を正当化するものはないようだけれど、ここは国会に国政調査権でもなんでも使ってもらって、公文書管理の実態を明確にしてもらう必要があるのじゃなかろうか。

 

明らかにしてもらいたいのは、次のようなことだ。

  • 管理簿への不記載は、この「桜を見る会」名簿だけなのか、それともほかにも同様の事例があるのか?
    →もしも「これだけ」というのであれば、その理由を明らかにすることによって犯罪行為がどのようにして発生したのかが判明するだろう。そして問題は、「桜を見る会」問題の一部分として収束する。
  • ほかにも同様の事例があるのであれば、いったいどの程度の割合で作成された公文書が不適切に管理されているのか?
    →この場合、問題は「桜を見る会」問題とは別個のコンプライアンス問題となる。現代の公文書はすべてコンピュータで作成されており、それはシンクライアント式だということなので、現状はサーバー管理のログを見ればはっきりするはず。
  • 不適切な管理は、系統だったものであるのか、偶発的なものであるのか?
  • 系統だったものであるのなら、その意思決定はどのように行われ、責任はどこに所在するのか。
    →その場合、なぜ特定の文書を闇で管理するようになったのか、忌憚のない意見を聞く必要がある。技術的問題、予算問題などがあるのなら、手当しなければならない(ただし、それで不正が不正でなくなるわけではない)。政治的な力が働くのであれば、その構造をなおさなければならない。
  • 偶発的なものであったとしたら、組織としてそれを防止する対策がなぜとられなかったのか?
    →公文書管理に関する研修などは実施されていたのか。管理が適切に行われているかどうかを保証する事務体制はとられていなかったのか。

ざっと思いつくだけでも、最低限、このぐらいの調査は必要ではなかろうか。個人的には、「桜を見る会」にまつわることだけが異常なのだと思いたい。そうであれば、まだ政府機関というものを信頼できる。わるいのは政権であって、政権が交代すれば多少はマシになるんじゃないかと希望がもてる。けれど、もしもそうでなく、政府機関の内部統制が全くとれていないということであれば、それはこの国の行政が、近代国家以前のものであるということになってしまい、信頼もなにもなくなってしまう。トップを交代させるだけではとてもその信頼は回復できない。全公務員をいったん解雇し、新たな基準で採用するぐらいのことをしてもらわないと、とうてい信頼は回復できないのではないか。

ぜひ、日本国が信頼に足る法律にもとづいて運営される国であるということを示してもらいたいと思う。