EVオーナーへの道は遠い - タイムリミットは近づいているのに

太陽光発電の買取制度で定められた固定価格での買い取り期間が、我が家でもあと半年で終了する。制度の開始から10年、ウチは開始年度の申込みは逃したが、まだまだ高値で売れた2010年には間に合った。ちなみに、当初買取価格の42円とか、次の年度の38円とか、それが高い、不公平だというような話はよく聞くが、当時は太陽光発電システム一式の価格が現在とは比べ物にならないぐらい高価だった。比較のしかたによって大きく変わるが、10倍ほどもちがったといっても大げさに過ぎないぐらいには高かった。それでは誰も買わないから、普及策としての買取価格保証だった。実際、38円の買取価格で儲かったのかと言われたら、10年でようやくかつかつ設置額の元がとれたかとれないか程度でしかない。それはウチのライフスタイルやその変化が大きく影響したので、一般には元さえとれなかった家庭も少なくないだろう。太陽光発電で儲けたのは設置価格が急落した割に買取価格が高止まりした2013年以降の数年間に設置した人々であって、当初は制度の運用はうまくいっていたと私は評価している。このあたりのことは別エントリに(メガソーラーの報道を家庭用のものと誤解して書いたちょっと恥ずかしい記事として)詳しく書いている

で、たまたま運良く設置金額ぐらいは回収できそうではあるのだが、太陽光発電、実は10年を過ぎてからが本番である。というのは、太陽光パネル(光電池)そのものは耐用期間が10年やそこらではないことが次第に明らかになってきている。20年くらいは余裕で発電しそうだし、うまくすれば30年、40年、それ以上にわたって電圧を発生し続けるだろう。可動部のないシリコンでしかないわけだから、いくら紫外線に晒され続けるといっても、そうそう急激に劣化するものではない。ただし、システム全体で見れば、そんな楽観はできない。太陽光パネルにはプラスチック部分もあり、それは素子や表面を覆うガラス、枠のアルミ合金よりは劣化が早いだろう。だいたいからして、配電周りの耐用年数は、それほど長いわけはない。いくら直射日光の当たらないところに配線されているとはいえ、古い電線は決して安全とは言えない。それよりなにより、直流として発生する電流を系統連結のために交流に変換するために不可欠であるパワーコンディショナ(通称パワコン)の寿命が早ければ7年ぐらい、長くても15年はもたないとされている(ウチは幸いにも10年の固定価格買取期間に壊れることはなかったが)。これが安くない。いまの相場は知らないのだが、たぶん取り替えるには工事費を入れて20万〜30万円ぐらいはする。修理も不可能ではないのだが、コンデンサの取替えになるらしく、基盤ごとごっそり替えることになるし、長期使用する関係で部品の在庫があるかどうかもわからないから、かえって高く付くことが十分に予想される。

そうなると、10年をとりあえず1区切りとして、そこから先、どうするのかという決断を再び求められることになる。やめてしまうというのもひとつの考えかただ。だが、その場合、発電しないパネルが屋根の上に乗っているのはあまり感心したことではない。取り外すとなると工事費で数十万円かかるだろう(現在では足場を組まねばならないと基準が上がっているので、もっとかかる可能性もある)。取り外したパネルには中古品としての価値はあるが、まだまだ中古市場が成熟していない現状では二束三文だろう。結局、経済的なことだけ考えたら、ここでやめるのはもったいない(経済的なこと以外でもやめる理由はあんまりない。たとえば「地球環境のために!」みたいな意気込みで導入した人は、途中でやめる理由はない)。

 

ということで、どう続けるかということなのだけれど、これまた、続けることでちょうど「儲かりはしないが元がとれる」状態にはなる。どういうことかというと、このあいだ関西電力からお知らせが来て、固定買取価格以降はkWあたり8円で買い取るという。現在のウチの売電状況から類推すると、これは年間でおそらく2万円程度の売上になる。一方、自家消費による電気料金節約分というのがあって、これが家庭によってちがうのだが(さらに季節によってもちがうのだが)、現状だとおそらく年間3〜4万円ぐらいになる。合計すると5〜6万円で、遠からずやってくるパワコンの交換などのメンテナンス費用が今後の10年間の積立でちょうど賄えることになる。よくできているといえばよくできている。

 

さて、このkWあたり8円という金額、実は予想していたよりもかなり高い。それにしたところで、二束三文感は否めない。それに比較すれば電気料金節約分のほうがずっと大きいのだが、それはkWあたりの電気料金が、買う側になればずっと高額になるからだ。ならば、自家消費分を全部自家発電分で賄えばもっと節約分は大きくなる(つまり儲かる)のではないかという発想が生まれる。発電量と消費量がどちらも大きい家庭ではこれは実に真実で、したがって、家庭で蓄電システムを備えることが経済的にもインセンティブとして高まる(蓄電システムには、その他にも災害対応などのメリットがあるので、実際のところオススメではある)。ただし、ウチの電気料金の請求書は実につつましいものだ。全部を自家発電分でゼロにしたところで、たいして儲からない。そして、蓄電システムは安くない。ウチのような小規模なシステムでは、とても蓄電システムを入れて割が合うようなことはない。

ただし、もしも電気だけではない全エネルギー消費までを含めて考えれば、自家消費を増やすことでメリットが生じる可能性がある。ということで業者は「オール電化」を売り込んだりするのだけれど、実際のところウチではガス料金も安いので、全然メリットがない。ただし、移動のためのエネルギー消費、つまり自家用車のガソリン代まで含めれば話は大きく異なる。ガソリン代はここ数年、ライフスタイルの変化とともに増えて、年間で20万円にもなる。これを半減できれば、それだけで8円で売るよりもずっと経済的なメリットは大きい。そしてちょうど、自家用で10年以上乗った軽自動車が買い替えどきだ。これは電気自動車(EV)を導入しない手はない。

 

ということで、3年ほど前からEVを探してきた。軽でEVとなると、選択肢は三菱のi-MiEVしかない(現在は軽から外れたのかもしれない)。それの商用車タイプのワゴンを購入しようと、業者を前にあと3秒で契約完了、という状況になったのが2年前だ。その瞬間、業者が「200ボルトの工事の方は説明しましたよね」と確認したところですべては止まった。

現在の状況は知らないのだけれど、その段階で、iMiEVは100ボルトの充電が可能だった。ということは、昼間、太陽の出ている時間帯に家庭用コンセントから充電すれば、EVはほぼ全て太陽光発電の電気で走ることになる。私が車を使うのはたいてい夕方以降なので、その運用でうまくいく計算だった。ところが、充電は基本的に専用コンセントからでないといけないと、このときになって初めて業者が説明してきた。専用コンセントは基本は200ボルトだが、100ボルトにすることもできなくはない。だが、その場合でも電力契約をした充電専用のものにする必要があるという。これでは私の目論見は完全に狂う。私は机の上に出した印鑑証明とハンコを引っ込めるしかなかった。

言い分はわかる。まず、電気料金を考えたら通常の家庭用の契約ではなく、電力契約にすべきだ。さらに、電圧が高いほど充電は短時間でできるので、電圧は高いほうがいいに決まっている。そして、安全性を考えたら大電流が流れる回路は家庭用のものと別にしたほうがいい。一般的にはいちいちもっともなのだけれど、太陽光発電の電気を有効に使いたいという私の希望とは相容れない。

こっちには、kWあたり8円という超格安の電気がある。金銭的に新たに電力契約にするメリットはない。さらに、1日の走行距離はたかが知れていて、おまけに充電には十分の時間がかけられる。低電圧でゆっくり充電することに何の問題もない。ゆっくり充電するなら大電流による危険性もなかろう。だから、100ボルトでそのまま使いたいのに、それでは売れないと業者はいう。EV計画は頓挫した。

その後、父親の入院などもあって結局この計画は放置されたままなのだが、そうこうするうちに、以前から注目していた「超小型モビリティ」がいよいよ販売になるのではないかという噂が聞こえてきた。そういう型式になるかどうかはわからないが、来年にはトヨタがそれっぽいのを出す。当然、他のメーカーも追随するだろう。いまも類似のものは中華製で手に入るが、それらは概ね100ボルト充電だ。さあ、どう出るか、注目している。