老人の繰り言について

世の中を引退した年寄りなんて暇なものだろうと思うのだけれど、老母に言わせればとんでもないということになる。年寄りは忙しい。そういわれて改めて老母の日常を観察すると、それはたしかにそうだ。たとえば先週訪れたときには「寒くなってきたから衣替え…

短期記憶をなくすということ

ここのところ連続して90歳を迎えた老母の話を書いている。 mazmot.hatenablog.com mazmot.hatenablog.com ほかにネタはないのかと言われそうだが、ネタはある。ただ、タイミングを見計らっているうちにどんどん逃げていく感じで、記事にあげていない。それで…

電脳の幻想に迷う時代

ひとつ前のエントリで、老母のことを書いた。認知症が進んで実際にやっていない行動(この場合は入院している人のお見舞い)を事実と誤認してしまうという、それだけとりあげればかなり悲惨な状況だ。ただ、本人に悲壮感はなく、また、虚構を事実と言い張る…

認知症の雨月物語的解釈

Virtual realityという言葉はだいぶ古くから使われている。確かな記憶ではないのだけれど、VRなんてものが実質的になかった1990年代にはもうあちこちで目にしていた(だからジャミロクワイのVirtual Insanityなんて曲も生まれたわけだろう)。Virtualという…

数学教育における四則演算指導の意味

大学の授業で四則演算を教えることの是非について、最近よく議論を見かける。これは文部科学省が「それってどうなのよ」と指摘したことに端を発して、「そんなことを大学で教えるべきではない」「いや、高校までの教育でそれができていないのならどこかで補…

ウソだらけの人生の始まりだったのか?

今週のお題が「4月1日の思い出」ということで、別にふだんはそういうのに乗る趣味はないのだけれど、やっぱり忘れられない思い出があるから、改めてここに書いておこう。あれはほんと、どういう意味だったのだろうと、未だによくわからないでいるのだから。 …

ポン菓子の思い出

ポン菓子の日本での普及に関しては詳しい研究があるようなので、そちらを参照してもらうのがいいだろう。 ポン菓子の起源と米・韓・中・台および愛媛県のポン菓子の食文化The Origin of the puffed rice and the Pongashi Culturein U.S.A., Korea, China, T…

お局制度による日本企業ガバナンスの研究

というような論文がないかと探したけれど、能力不足のせいか見つけられなかった。もちろん、「お局」(otsubone)の存在は多くの文献で報告されている。けれど、そのほとんどはビジネス関連の軽い本であったり、あるいは小説のような文学作品であったりする…

雑穀を食っていた話

いくつかの原稿(たぶん何かの企画で書いてでボツになったエッセイ)にはもっと詳しく書いたし、このブログでも2回ぐらい触れている(こことここ)から目新しい話ではないのだけれど、若い頃1年ばかり、雑穀を主体に暮らしていたことがある。このブログで過…

「法学通論」を読んだ

書評とかレビューとかいうのでもないし、夏休みの読書感想文的なものでもない。「法学通論」(田中誠二、千倉書房)という本を読んだので、とりあえずのメモとして書いておこう。どうやら古い時代に大学1年生あたりを対象に書かれた教科書らしい。 私が学生…

自治会と商品券の話 - 日常のつぶやきとして

以下、ごちゃごちゃと長いけれど、特に主張とかある話じゃなく、単純に「昨日、こんなことがあったよ」というだけの話。 自治会について書き始めたら長いので、そこは端折ることにする。大雑把に私の認識だけは初めに書いておくと、これはもともと鎌倉から室…

信用と疑念の連続体の上を歩きながら

“You were about to confide it to Monsieur Bonacieux,” said D’Artagnan, with chagrin. “As one confides a letter to the hollow of a tree, to the wing of a pigeon, to the collar of a dog.” 「ボナシュー氏なら信用して託そうとしていたのに」ダル…

イラストが本文化していく時代

ブコメ(はてなブックマークにつけたコメント)の補足を書いておこう。もともとの話題はこちら。 togetter.com これももともとのTweet(といまは言わんのか)をまとめたもので、さらにそれにブコメつけるというやたらと階層のめんどくさい構造になってるのだ…

「ディスレクシア」(マーガレット・J・スノウリング)を読んだ

本をもらったので、昨日、一気に読んだ。もっとも、200ページほどの本だから、それほどたいへんな話ではない。 www.jimbunshoin.co.jp 「もらったから読んだ」というのは身も蓋もない事実で、けっして興味があったわけではない。とはいえ、私の仕事にまった…

中学受験は子どもの成長に寄与するのか

逆境は人を成長させる? 「中学受験は子どもの成長に寄与するのか」という大仰なタイトルにいきなり答える形でいうならば、「それは場合による」。さらに言うならば、たいていの場合は寄与する。ただしそれは、人間というものがそういうものだからだ。人間は…

若い頃の本棚の中身が出てきた

死んだ父親は営業職から早い退職をして以後の人生後半を自宅の片隅にしつらえた町工場で製袋加工を営んでいた(ちなみにこの工場はもともと母親の個人事業だったから、「どっちが社長か」というのは微妙だ)。しっかり稼いでいたのだけれど、マラソンを引退…

シチズンシップについてのわかりにくい話

「シチズンシップについてのわかりやすい話」みたいな解説がどこかにあったら、ぜひ読みたいと思っていた。というのも(あんまりはっきり書くと不都合もあるのでやや事実を枉げて書くのだけれど)大学を受験する高3生から「世界市民としてあなたはどう生きる…

チラシ配りの思い出

長い人生で戸別のチラシ配り、つまりはポスティングをやったことが何度かある。ポスティングの求人のチラシがたまにポスティングされているが(ややこしい)、そういう専門の事業としてではない。事業なら数種類をまとめて投函するので1枚あたりのコストが下…

新刊発売のご案内 - 「貧困とはなにか」(明石書店)

去年の秋から年末にかけて1冊の本を翻訳していた。ようやく出版、発売になる。 www.akashi.co.jp 新版 貧困とはなにか - 株式会社 明石書店 https://www.amazon.co.jp/dp/4750356484 この翻訳に関するネタは、何度かこのブログでも取り上げてきた。 mazmot.h…

EV乗り比べの記 - i-MiEVとMINICAB MiEVを乗ってみて

いま、車を乗り換えたところだ。先週までちょうど2年のあいだ乗っていたのが三菱のi-MiEVで、これは2009年に製造されたEVの初期型の中古車だった。それに代わって乗り始めたのが同じ三菱のEVで、やはり型式としては同じ時期に製造が開始された軽ワゴン車の新…

「主義」という語のややこしさについて - まとまらない雑感

-ismと「主義」 量としてはたいしたことはなくなったとはいえ、いまだに翻訳の仕事をあたえてくれるクライアントがいる。AIの時代にこれはなかなかありがたいことだ。いずれはくると予測していた「翻訳はマシンの方が使いやすい」時代が、現に到来しつつある…

解釈すること

「一を聞いて十を知る」という言葉がある。利発さを表す言葉であり、私の兄などはよくそんなふうに褒められていた。子どもの頃のことだ。私の方はといえば「あんたは何遍言ってもわからん」と呆れられる方で、利発さとは程遠かったのだが、だが、そこは遺伝…

息子が不登校になったときの思い出

学校は行っといたほうがいい。これはもう大前提だ。その上で、実際には学校なんてそこまでのもんでもない。だから、命がけで行くようなもんじゃない。しんどかったら行かなければいい。新学期のこの時期、こどもの自殺が有意に増える。死ぬくらいなら休めば…

書くだけなら、犯罪の手口を書いても罪には問えない(ふつうは)

死んだ祖母が私が子どものころに「世のなかに覚えておいてわるいことは何もないよ」と言っていたのを、いまでもその口調とともに思い出す。「泥棒だけは覚えたらあかん」とも言っていたのだが、この「泥棒を覚える」は知識の類ではなく、慣用表現で「悪事を…

テレビを見ないとどうなるか? - 特に大きな影響はないかな?

私はテレビを見ない子どもだった。私の息子もそうだ。単に特殊な事例ではあるのだけれど、2例そろってるから、報告の資格はあるのではなかろうか。テレビを見なかったからといって、それで子どもが不幸になるわけではない。逆に優秀になるわけでもない。すこ…

己を知るということ - 自己認識と思い込みのはざまで

「敵を知り、己を知らば百戦危うからず」は孫子の兵法以来、経験則としてあらゆる勝負事の基本とされてきた。敵(彼)を知ることは、困難ではあっても、一定の限界内では客観的に判断可能だ。これは通俗ビジネス書などではたとえば顧客情報や市場分析のよう…

無目的な行動と合目的的な行動と - まとまらない雑感

山登りらしい山登りをやめてから20年以上になる。ピッケルだとかクライミング用のロープだとか山靴だとかは、結婚したときに捨てた。命を危険にさらすことができる立場ではなくなったと覚悟を決めたからだ。ただ、実質的にはその数年前からそういった道具類…

「正しい勉強の仕方」なんてない - 幻は追いかけないこと

「勉強のやり方を教えてほしい」という需要が多いことに、家庭教師をやっていると気がつく。そこに至る状況はだいたい想像できる。 「なんで勉強しないの」「やろうと思ってるんだけど」「じゃあ、やりなさい」「何からやったらいいのかわからない」「まず宿…

外国大学への進学を勧める理由とその対応 - 主に英語に関しての話

私立高校なんかでよくプログラムに組み込まれてる短期留学などの語学留学を除けば私の生徒で外国の学校へ進んだ人はいまのところいないのだけれど、遠からず出てきても不思議はないと思っている。先日も、体験授業だけ受けて結局契約には至らなかった医学部…

「いつ、だれが」に関心がある自分と、ない自分

辻邦生の「安土往還記」を少し前に久しぶりに読み返した。中学生か高校生の頃に何度も読んで「スゲェわ」と感心して以来、十年ぐらいおきに読み返しているんじゃないかと思う。とりあえず手堅く楽しめる1冊として、自分の中ではリリーフエース的な位置づけと…