歴史の本を書いた - 身の程知らずではあっても

家庭教師は基本的にナンデモ屋だから、生徒が必要とするものはなんでも扱う。小学校の算数から高校数学まで教えるし、国語だったら平仮名の練習から漢文の解釈まで、英語だったらABCから英検1級まで、どんな教科でもどんな難易度でもやる。もちろん数学Ⅲとか…

曲がり道を前にして

…クイーン学院を卒業したとき、未来はまっすぐに、一本道みたいに続いてる、そんなふうに見えた。マイルストーンがひとつひとつ、先の方にはっきりと見える気がした。でも、いま、道は曲がっている。曲がったところの向こう側に、何があるのかわからない。け…

牛乳の思い出

私はどちらかといえば牛乳をあまり飲まない。冷蔵庫にミルクカートンが常備されている、ということはなく、年に数回、500mLの紙パックを買う程度だ。ソフトクリームは好きだけれど、1つ食べるとほぼ確実にお腹を冷やしてしまうので、めったに食べない。乳製…

小学校卒業式、羽織袴の思い出

いま大学2年生の息子は、小学校卒業式に羽織袴で出席した。本来これは彼の思い出であり、私がどうのこうのと書くことではない。ひょっとしたら彼の中では黒歴史に近いものであるかもしれず、あまり触れられたくはないかもしれない。とはいえ、親には親の側の…

第二次世界大戦中の英語教育について(メモ)

教育学業界のことは私にとっては謎だ。家庭教師という仕事をしている以上、それに関する学問に興味はあるのだけれど、入門書を眺めてみてもどうにも解せない。だから、アカデミックな教育の話になると私にはいろいろととんでもない誤解があるかもしれない。…

それは「予言の自己成就」ではない - 類似の構造ではあっても

前回の記事 mazmot.hatenablog.com について、早速にブックマークコメントを頂いた。こういうことがあるからブログはやめられない。ありがたいことだ。 指標が勝手に自己実現してしまう現象について知りたい - 天国と地獄の間の、少し地獄寄りにて 社会学的…

指標が勝手に自己実現してしまう現象について知りたい

人間は外界の様子を知るために五感を備えているのだけれど、これが案外とアテにならない。アテにならないとはいえそれを使わなければ情報が得られないのだから、なるべくそのあやふやさをなくすために指標が用いられることになる。温かい寒いの感覚は前日の…

平成の米騒動について

トンガの火山大爆発は、ほんとにすさまじい。被害の様子もまだよくわからないというのが、不気味だ。現地の人々の無事を祈るとして、ここにきて何やら話題になっているのがいわゆる平成の米騒動、1993年の冷害による不作に端を発した米不足だ。なぜなら、こ…

アンラッキーと貧困と

「子どもの貧困とライフチャンス」の各章の紹介、というよりも読書感想文をここまで書きつづってきた。監訳者のあとがきをのぞけば、これですべてである。あとがきについては、ふれる必要はないだろう。あとがきだ。このシリーズは、これでおわりにしよう。…

提言を価値あるものにするために

「子どもの貧困とライフチャンス」の第10章〜12章は、ここまでのまとめということになっている。10章は各章で述べられてきた事実、すなわち所得、家族の構造、幼児教育、学校教育、健康、健康、メンタル、住居、就労の問題を有機的にまとめ上げている。11章…

金がないのは、かせげないからだ

かせぐにおいつく貧乏なし、とはよくいったものだが、最近ではどうも貧乏の足がはやくなったのか、ときどきおいつかれてしまう。経済の基礎代謝があがっているからだ。過去30年ばかりも賃金はあがっていないのに、固定的に出ていく金額はジリジリとあがって…

住む場所の問題 - 生きることの基礎として

長く生きてきたおかげで、いろんな場所に住んできた。豪邸からアパートまで、ひととおりの暮らしはわかる。いちばんせまかったのは公称6畳、天井を見上げたらベニヤ板が3枚半という便所共用の中野のアパートだった。いちばん惨めったらしかったのは、田んぼ…

心が不調でチャンスがつかめるか

「子どもの貧困とライフチャンス」の第7章は、第6章にひきつづいて健康の問題だ。そのなかでもとくに、メンタルヘルスにかんする問題をあつかっている。貧困下に暮らす子どもたちはメンタルをやられる。それがライフチャンスに影響しないわけはないだろう。…

健康は金では買えないが、金がなければ健康は損なわれる、という話

「子どもの貧困とライフチャンス」の第6章は、「ライフチャンスには健康が必須条件だ。健康のためにはそれをささえる経済資源が必須だ。つまり、貧困対策をしなければならない」という理屈で論が展開される。これは2010年に出された報告書、通称マーモット・…

学校というやっかいな存在

私は学校がきらいだ。自分自身の経験として、すきではない。学校の唯一の魅力は友だちとあえることであって、それ以上ではない。授業のすべてがつまらなかったかといえばさすがにそこまでではなく、たまにおもしろい授業をしてくれる教師もいた。けれど、そ…

幼児教育は有効なのか? - 「教育」という意味ではなく

「子どもの貧困とライフチャンス」という本の第4章は、保育・幼児教育と子どものライフチャンスについて書かれてある。私は近所の保育園に縁あって年に何度かお邪魔するぐらいの関係は小さな子どもたちとつないでいる。なので、この章にはとくに関心があった…

「家庭崩壊」が原因か? - 子どもの「チャンス」をそこなわないために

「子どもの貧困とライフチャンス」の第3章は、「家族」に対する考えかた、価値観の相違について改めて考えさせてくれる。というのも、日本ではたとえば夫婦別姓問題をつうじて、「家族の絆」を主張する保守政治家の存在が浮き彫りになり、その一方で同性カッ…

なにはなくとも銭と金 - 低所得はライフチャンスをそこなう

「子どもの貧困とライフチャンス」の第2章は、お金の問題だ。それは冒頭にはっきりと書いてある。「子どものライフチャンスを改善することをねらった戦略を立てるのであれば……、適切な世帯所得をあらゆる家族に保障できるような計画を含めることが必要になる…

「ライフチャンス」って?

最初、この「子どもの貧困とライフチャンス」の原本を受けとったとき、「なんじゃいな、これは」とおもった。というのも、門外漢の私にとってlifechanceといえば生存機会であり、すなわちそれは生きるか死ぬかの問題であるようにおもえたからだ。「そんな御…

「子どもの貧困とライフチャンス」が出ます

久しぶりに、翻訳者としてのクレジットがはいった本が出る。英語の出版で謝辞を入れてもらったのはここ10年で2度ほどあるけれど、それは翻訳者としてではなくそのコーディネイトをしたという意味でしかない。翻訳者として名前を出してもらえるのは15年ぶりぐ…

定義されない話には気をつけよう - 解決されない「問題解決能力」

「問題解決」は、家庭教師のような仕事をしていると避けて通れない概念だ。なぜなら、家庭教師の仕事は公教育の補完であると期待されているのだし、その公教育の基準を決めた学習指導要領には、「問題解決」の言葉が頻出する。そういう感覚でこの記事を読ん…

「有機農業」についての7つのよくある勘違い

はじめに 現実がどうかとかいうことはさておいて、理念として有機農業に一定の価値があることはいまさらどうこういう必要のないことだと思っていた。小学校の教科書にさえ有機農業や無農薬、省農薬の概念が記載されるようになって久しい。世の中の全員が認め…

「元首の器」は、美談ではない - 一般庶民にも帝王学を

天皇陛下がオリンピック開会の辞を訂正されたということが報道され、ここ、はてなでもブコメが集まっている。「さすが」とか、あるいは先の「原稿糊付け事件」とあわせて「首相とくらべてどうよ」みたいなコメントがあって、それはそうだろうとは思う。 dot.…

論破するのは議論ではない、というあたりまえの話

ものすごくレベルの低い話をするのだけれど、世の中、議論することの意味を取り違えている人があまりに多いように思う。議論は、議論への参加者を説き伏せるために行うのではない。議論は、よりよい解決策を発見するために行うものだ。これは議論の大原則だ…

自分でない何かを求めるのは群れ生活者の宿命かもしれない

Tracy Chapmanというシンガー・ソングライターがいて、Talkin' 'bout a Revolutionとか、やたらと格好のいい曲を歌っているのだけれど、なんと言っても出世作のFast Carがすばらしい。アコースティックのギターリフ(けっこうむずかしい)にのせて最小限のバ…

価値観から逃れられないからこそ、いったんそこを保留にすることが重要になるという話 - 「良い」「悪い」で見えないもの

何の気なしに書いたブコメに星がいっぱいついて慌てることがある。いや、私の意見に何かを感じてくれた人が多いのは単純に嬉しい。一生懸命考えて書いたブコメだと、特に嬉しい。慌てるのは、何の気なしに書いたものが思わず伸びるときだ。詰めて書いてない…

「太陽光発電の拡大は民主党政権のせい」という事実誤認 - 時系列は正しく見よう

私はもう10年ぐらい前になるけれど、非正規雇用の専門職(という言い方がものすごく奇妙なのだけれど)として太陽光発電関係の公的な仕事にごくわずかだけかかわっていたので、いまでも太陽光発電に絡んだニュースには注目している。そして、ブックマークし…

宿題を自明とする教育方法は正しいのだろうか - 「宿題論」はなかなか進まない

「宿題論」という名前のファイルがデスクトップに置いてある。プロパティを確認すると書き始めたのはちょうど2年ほどまえになる。プロットも考え、初めの方を原稿用紙換算で10枚ほど書いたところで、止まっている。書き始め時点ではそういう構想でもなかった…

「はらぺこあおむし」の思い出 - ひとの趣味にはケチをつけないでおこう

絵本作家のエリック・カールさんがしばらく前に亡くなったそうで、「そういえばお世話になったよなあ」と追悼の思いを抱いた。お世話になったといっても、私自身が読者としてお世話になったというニュアンスではない。いま大学生の息子が小さい頃、よく読み…

「ねいろブレンド」レビュー

booth.pm 真音のアルバムが届いた。正直なところ、あまり期待していなかった。というのは、彼らがアップロードしていた予告ティーザーの音があまり良くないと感じていたからだ。いまにして思えば、貧弱なスマホのスピーカで聞いたのがよくなかったのだろう。…