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シアワセの容相

あしたはこっちだ

いかにして子どもをゲームから遠ざけるか

社会とか、文化とか

自分自身を振り返って、親が子どもに何かを禁じるのは、そのこと自体が問題だと思う。親の言うことなんて、たいていは聞かなくてけっこう。かつて子どもだった自分自身の経験からはそう言い切っていいと思う。

とはいいながら、今度は親になってみると、子どもにはいろいろな注文をつける。勝手なものだなと思うが、立場がちがうと見えるものがちがってくる。どうしても子どもには「こうあってほしい」というのを求めてしまう。こっちはやんわりと「求めている」つもりでも、当然ながら押し付けてしまう。

そんな自分自身の理想として、ゲームに時間をつぶす子どもには育ってほしくなかった。ゲームがダメだと一刀両断にするつもりはない。ただ、限られた時間しかない子ども時代に、ゲームに消費する余裕はないと思う。子ども時代にしかできないいろいろな体験をしてほしい。ゲームの世界での体験は、大人になってからでもできる。むしろ、最近の高性能化したゲームの世界は、大人になってからのほうが楽しめるだろう。

そう考えて、息子には携帯型のゲーム機は買わなかった。ただ、Wiiについては私自身の側に興味があった。いや、Wiiのゲームにではない。PowerPCで動くそのハードウェアにLinuxをインストールできると聞いて、「そういうマシンならちょっと触ってみたいな」という非常にマニアックで外道な趣味であった。とはいえ、実際に買おうとまでは思わなかった。

それが、息子が小学校に上がった頃だったと思う、「Wiiを欲しい」と言い出した。妻も、「完全にゲームを禁止するというのもこの時代に合わないんじゃないか」みたいな意見だった。それは確かにそうかもしれない。誕生日も近い。プレゼントにふさわしいかもしれない。そこで、導入することにした。もうずいぶんとむかしの話になる。その息子がいま中学生だから、7〜8年ほど前か。

なんでこんなむかし話を持ちだしたかというと、こちらの記事

anond.hatelabo.jp

に付けたコメントが、割と評判がよかったみたいだったからだ。そうか、自分のやった工夫が他の人のヒントになるのならと、もうちょっと詳しく書いてみようと思った。

 

さて、そのむかし、そういった事情からWiiを買うことに決めたのだけれど、ゲームにどっぷりはまられるのは嫌だ。利用のためのルールをつくらなければいけない。しかし、子どもがルールを守れると思うほど、現実を見ない私ではなかった。さて、どうするか。

買い与えてしまったのでは、ここは管理できない。そこで、「Wiiを買うが、その所有権は父親のものである」ということを明確にした。その上で、プレゼントとして「利用する権利」だけを与える。つまり、モノをプレゼントするのではなく、体験をプレゼントするわけだ。これはこれで理にかなっているだろう。

そして、その「利用権」を30分に分割した。これが「Wii利用券」だ。Wii利用券は確か20枚綴りだったと思う。一気に10時間分。それを誕生日プレゼントとして渡した。もちろん息子は大喜びした。

この「利用権」、もちろん無制限ではない。詳細を書いた紙を用意したのだが、その文書はもうパソコン上からは消えている。保存しておいてもしかたないものだから。うろ覚えだが、確か連続して2時間以上使用しないこととか、夜8時以降は使わないこととか、そんなことがあったのではないかと思う。親が誘ったときは親の利用権で行うので券は不要とか、そういう特例条項もあったと思う。

ともかくも、この「Wii利用券」、使えばなくなる。しかし、ただなくなるだけでは面白くないので、特別なときにはそれがもらえる約束にした。息子に確認したら、「風呂掃除は1枚」だったそうだ。そのほかにも、お手伝い系で枚数を決めて発行したような記憶がある。あまり手伝いはしなかったが、それでも必要量は溜まっていたようだ。本人によれば「風呂掃除でもらったらその場で使った」とのことだけれど、友だちが来たときとかに大盤振る舞いしていたこともあったので、やっぱり少しは溜めていたのだろう。その後の誕生日でいくらか追加したこともあったように思う。

 

制限されていても、それが量として可視化されていれば、それを管理して使うことがやりやすくなる。そういう意味で、この「Wii利用券」はヒットだったのではないかと思う。

というようなこともすっかり忘れていたのだけれど、数週間前、何かの折に息子が、「あのWii利用券って、よかったな」と言った。それで思い出したタイミングに上記の記事があったので、コメントをつけたわけだ。だから、これは親にとってよかったというよりも、子どもの側の意見として「よかった」のだと思って欲しい。

 

じゃあ、親としてはどうなのかというと、結局、子どもをゲームから遠ざけるという試みには失敗したのかもしれないと思う。というのは、やがて息子は親が不在のときを狙ってWii利用券など無視でゲーム機を立ち上げるようになった。それに文句を言うバトルが1年ほど続いたのだが、やがて息子は「Wiiを止める代わりにMinecraftを使わせてくれ」という条件を出してきた。こちらとしてはパソコン上のゲームなら制限をかけやすいと、Wiiを処分することと交換でOKした。ちなみに、このときにはスクリプトを書いて一定時間以上の使用ができないようにした。しばらくはうまくいっていたのだけれど、そのうちに息子のスキルが上がってきて、私のヘボスクリプトのバグをついてくるようになったので、最終的に管理は諦めた。いまはネットにどっぷりはまり、「こうなってほしくない」と思っていた少年像そのもの。やれやれだ。救いは、そうやって身につけたスキルでBlenderとか私の使えない3Dの世界のツールを使いこなせるようになったことぐらいかな。ま、ロクなことではない。

 

ということで、成功例というつもりはない。ただ、これを参考に、もっといい運用が生まれてくれば、それはそれで素晴らしいことではないかと思う。そうやってうまい方法が世間に広まっていけば、やがてあの息子が親になったときに、もっと上手に子どもをゲームから遠ざけておくことができるようになるだろう。まあ、そうしたいかどうかは別な話として。