シアワセの容相

あしたはこっちだ

トランプは死なない - それがアメリカの民主主義

聞き飽きるぐらい聞いてきた「トランプ失言」が、またも明らかになった。そして、「今度こそあいつは終わった」みたいな言い方も聞き飽きるほど聞いた。だが、トランプは終わらなかった。ということは、今度も終わらない。 

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なぜなのかといえば、それは既に共和党そのものが1年前の共和党ではないからだ。上に乗っかっている人々は、昔ながらの共和党だ。だが、いまトランプを支持している人々の相当な部分は、もともとの共和党員ではない。無党派層に分類される人々。そういう人々が、今回の選挙をきっかけにトランプを支持する目的のためだけに選挙人登録をした。

トランプは、もともと共和党の中心にいる人々にはウケない。というよりも、最初っから「なんだアイツは」という扱いを受けてきている。だからことあるごとに幹部連中からは文句を言われるし、予備選が終わってからようやく議員たちからの支持も集まり始めたような始末。これは、「しょうがないから勝馬に乗る」的な支持。心の底から支持されているわけではない。だから、かんたんに離反する。ちょっとしたスキャンダルでも「もう終わった」と言われる。まして、今回のような大スキャンダルなら、まちがいなく「終わった」と叩かれる。

だが、トランプを支持している人々にとっては、共和党幹部の言うことなんてどうでもいい。彼らは興奮しているのだ。政治は「まつりごと」。お祭りだ。彼らは自分たちが共感できるヤツを盛り上げていきたいと思っている。それがどういう結果につながるかなんて、どうでもいい。いや、自分たちが負けることがどういう結果につながるのかにだけ、ことさらに敏感だ。負けたらアメリカがアメリカではなくなってしまう。その恐怖に怯えている。アメリカがなくなるぐらいなら、少々の猥雑さは問題ではない。そう思う人々がいる限り、トランプは失速しない。

共和党は、もともと根っからの共和党員ではないトランプの立候補を断ることもできたはずだ。だが、それはしなかった。なぜなら、共和党であっても、理念は民主主義だからだ。民主主義的な手続きをとって立候補されたら、それを門前払いすることはできない。そして民主的に選出された候補なら、自分たちの候補として認めなければならない。

いくらスキャンダルにまみれても、多数決で票を集めたら当選する。それが民主主義だ。アメリカ人は、それをよく知っている。子どものころから叩きこまれている。だから自分たちが勝てると信じている間は、少々のことではくじけない。勝てば官軍になれることをよく知っている。

ただ、そこまでコアなトランプファンは、流石に支持者の中でも多くはないだろう。そのコアなファンの周辺にいるのは、旧来の共和党員とアンチ・ヒラリーだ。この周辺の人々に対しては、今回のスキャンダルは効果がある。だが、それが息の根を止めるところまで行くとは思えない。コアなファンの力だけでも、泡沫候補レベルははるかに超えている。勝てはしなくても、十分に戦える。戦い続けている限り、一発逆転の可能性は消えない。

その結果、なにが起こるか。最も極端な予想は、共和党の分裂だろう。それも、手続き上はトランプ一派を追い出すわけにいかないから、大統領選後に旧共和党のコアな人々が離脱する流れか。しかし、そうなればもうこの先、共和党は民主党には勝てない。二大政党制の弱みがここに出る。

最もありそうなのは、負け戦をやって、敗戦の責任をトランプに押し付け、そしてトランプが発掘した新たな支持層をそのまま頂戴しようという作戦だろう。だが、それらの層は、実際には伝統的な共和党政策を支持しない。実質的に党が変質してしまうはずだ。

 

それでも共和党の看板は続く。これだけ分断されてもアメリカ合衆国という国家が存続し続けているように。

 

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追記:トランプの放言がマイナスに働かない層は、コアなファンだけではないということも重要。その総花的な政策に期待してしまう人々も、「正しさ」は気にしない。

jp.reuters.com

今日のテレビ討論も、おそらく前回のリプレイに過ぎないだろうな。マスコミはヒラリー勝利で、トランプ派にとってはトランプ勝利と。サプライズのないままに期日を迎えることになるんだろう。